「商談の前に、Salesforceとメールを行き来して過去のやり取りを探すだけで30分かかる」「パイプラインのレビューのたびに、レポートを作り直している」。Salesforceを使う営業組織では、このような声をよく聞きます。
2026年8月、SalesforceとAnthropicは、提携の拡大「Claudeforce」を発表しました。その最初の製品が、ClaudeからSalesforceのデータを読み、更新までできるプラグイン「Salesforce in Claude」です。
本記事では、Salesforce in Claudeで何ができるか、使える条件と設定の手順を、公式の情報をもとに整理します。
あわせて、商談のパイプラインの分析例とプロンプト例、ベータ版で使うときの注意点を紹介します。記載の仕様は2026年10月時点の公式情報に基づきます。
営業でAIが役立つ場面と、足りないもの
営業の仕事のうち、AIに任せやすいのは、記録を探す・まとめる・比べる作業です。
- 商談前の準備:相手企業の調査、過去のやり取りの要約、まだ決まっていないことの整理
- 商談の後:議事録の要約、CRMへの入力、次回までのタスクの整理
- パイプラインの確認:止まっている商談の発見、ステージごとの通過率の集計
- 次の一手:商談ごとにやるべきことの提案
ただし、AIが答えられるのは、渡したデータの範囲までです。
CRMの入力が後回しになっていれば、止まった商談が「進行中」のまま残り、AIの集計も実態とずれます。商談の情報がCRM・メール・議事録に分かれていれば、1つのツールの中だけを見ても、分かるのはその一部です。
Salesforce in Claudeは、このうちSalesforceとSlackをClaudeにつなぐ部分を、SalesforceとAnthropicが用意したものです。
顧客の利用状況も同じです。当社が支援したRetty株式会社様では、顧客ごとの利用状況や行動データがBigQueryにあり、Salesforceには反映されていませんでした。BigQueryのデータをSalesforceへ自動で連携し、営業がBIやSQLを使わずに、Salesforce上で最新の情報を見られるようにしています(「Salesforceに最新の顧客情報を常時反映、営業の手作業を解消(別タブで開く)」)。
Salesforce in Claude(Claudeforce)とは
Claudeforceは、SalesforceとAnthropicが2026年8月26日に発表した、両社の提携の拡大の名前です(Salesforce and Anthropic Announce Claudeforce - Salesforce(別タブで開く))。
発表には、ClaudeからSalesforceを使う「Salesforce in Claude」と、Salesforceの製品の中でClaudeを使う取り組み(AgentforceやSlack)が含まれます。
本記事で扱うのは、前者のSalesforce in Claudeです。
Salesforce in Claudeは、Salesforceのアカウント(取引先)・商談・パイプラインをClaudeから扱えるようにするプラグインです。
Salesforceが作った営業向けのスキルと、SalesforceとSlackのコネクタがまとめて入っています(Use Salesforce in Claude - Claude Help Center(別タブで開く))。
2026年9月15日に、Anthropicがベータ版の提供を始めました(Bringing Salesforce into Claude - Claude(別タブで開く))。
含まれるもの
2026年10月時点で、Salesforce in Claudeには次のものが含まれます(Set up Salesforce in Claude for your organization - Claude Help Center(別タブで開く))。
- 営業向けのスキル37個:更新の準備、四半期ビジネスレビュー(QBR)の資料、パイプラインのカバレッジ、商談後のフォローアップなど
- SalesforceとSlackのコネクタ:それぞれを個別に接続しなくても使える
- 初回のセットアップのスキル:初めて開いたときに動き、使う人の役割と担当する顧客を読み取って、スキルをその人に合わせる
スキルは、Claudeに特定の作業の進め方を教えるための手順書のようなものです。
Salesforce in Claudeでできること
Anthropicの発表では、営業担当者の使い方として、次の5つが挙げられています(Bringing Salesforce into Claude - Claude(別タブで開く))。
| 使い方 | Claudeがすること |
|---|---|
| 毎朝のブリーフ | その日の商談、クローズが近い商談、リスクのある商談、返信が必要なスレッドをまとめる。金曜日には1週間をまとめ、上長への報告の下書きを作る |
| 商談の準備 | Salesforce・Slack・メールから、進行中の商談とその状況、今週チームで話したこと、未返信のスレッド、前回から持ち越した質問をまとめる |
| 商談の確認とクローズの計画 | チームの営業手法に照らして商談を採点し、見極めの不足、会えていない関係者、クローズ日を危うくする要因を挙げる。日付入りのクローズの計画も下書きする |
| 商談後のSalesforceの更新 | 文字起こしやメモから、フォローアップのメール、Slackへの要約、次のステップ・ステージ・クローズ日の更新案を作る |
| パイプラインの確認と予測 | ステージごとのカバレッジ、ずれ込みそうな商談とその理由を、対話型のダッシュボードにまとめる。取引先ごとに掘り下げられる |
Salesforceの発表でも、37のスキルの例として、商談の準備、商談の健全性の確認、パイプラインのレビューが挙げられています(Salesforce and Anthropic Announce Claudeforce - Salesforce(別タブで開く))。
ダッシュボードやブリーフから、クローズ日やステージの変更、フォローアップのタスクの追加を頼むと、ClaudeがSalesforceを更新します。更新の前には、初期設定で担当者の承認を求めます(後述)。
使える条件と始め方
使える条件
2026年10月時点の条件は次のとおりです(Use Salesforce in Claude(別タブで開く)、Set up Salesforce in Claude for your organization(別タブで開く))。
- 提供の状況:ベータ版。Salesforceのベータの申し込みで承認された組織が使える
- Claudeのプラン:すべての有料プラン
- Salesforceのエディション:ベータの対象になるには、最新のSales CloudのEnterprise Editionへのアクセスが必要
- 使える場所:Claudeのチャットと、Claude Cowork(ウェブ版とデスクトップ版)
Salesforceの発表には、9月にオープンベータを始める予定と書かれています。
一方、2026年10月時点のClaudeのヘルプセンターでは、上のとおりSalesforceの承認が必要と案内されています。申し込む前に、最新の条件を確かめてください。
手順1:Salesforceの管理者がアクセスを申し込む
- SalesforceのAgentExchangeを開きます
- フォームに入力し、Salesforce in Claudeへのアクセスを申し込みます
- 承認のメールが届いたら、メールにあるSalesforceのヘルプ記事の手順で設定します
手順2:Claudeの管理者が組織で有効にする
この手順には、Claudeの組織のプライマリオーナーかオーナーの権限が必要です。
- Claudeの「組織設定」→「プラグイン」で「Salesforce Marketplace」を探します
- 使うグループごとに、「デフォルトでインストール」「インストール可能」「必須」のいずれかを選びます
- Salesforceの管理者が、Salesforceの手順に沿ってSalesforceのMCPサーバーを有効にし、External Client Appのコンシューマーキーとコンシューマーシークレットを、Claudeの管理者に渡します
- Claudeの「組織設定」→「コネクタ」で「Salesforce(ベータ版)」を選び、コンシューマーキーを「OAuthクライアントID」に、コンシューマーシークレットを「OAuthクライアントシークレット」に入れて保存します
MCPは、AIが外部のサービスのデータを読み書きするための接続の仕組みです。
手順3:メンバーが自分のSalesforceアカウントでつなぐ
- Claudeの「カスタマイズ」→「プラグイン」を開き、「Salesforce in Claude」を選びます
- 「追加」をクリックします。管理者が有効にしていなければ、トグルでプラグインを有効にします
- 「Claudeに追加」をクリックし、自分のSalesforceアカウントでサインインします
初めて開くと、セットアップのスキルが自動で動き、役割と担当する顧客に合わせてスキルを調整します。自分で設定することはありません。
ヘルプセンターでは、最初の指示の例として「[取引先名]との更新の商談に備えて」「30日間動きのない取引先を表示して」が挙げられています。
分析例:パイプラインのどこで商談が止まっているか
ここでは、パイプラインを確認するときに、どのような集計をClaudeに頼むとよいかを、デモ用のデータで示します。
次の画面は、中小企業向けの人事労務SaaSを想定したデモ用のデータで、CRMの商談とステージの変更履歴から、ステージごとの通過率と滞留日数を集計したものです。

Claudeで作成した、ステージごとの通過率と滞留日数(デモ用のデータ)
この例では、デモから提案に進む商談は50%で、17%が失注し、33%がデモの段階で止まったままです。ほかのステージでは、74〜82%が次に進んでいます。
次に進んだ商談は、どのステージでも中央値6日で進み、90%が9〜10日以内に進んでいます。この日数を超えて動いていない商談を「停滞」とすると、進行中の1,245件のうち1,091件(88%)が停滞に当たります。
ここまで多い場合は、CRMの入力が後回しになり、実際には止まった商談が「進行中」のまま残っている可能性が高いと考えられます。

Claudeで作成した、停滞している商談と次の一手(デモ用のデータ)
ここでの日数は、商談がいまのステージに入ってからの日数です。
停滞している商談のうち684件(9.0億円)は、いまのステージに入ってから91日以上たっています。これらを受注の見込みに数えると、パイプラインの金額は実態より大きく見えます。
一方、いまのステージに入ってから30日以内の142件(1.9億円)は、まだ戻せる可能性がある商談です。担当者が先に連絡すべき商談として、ステージと金額の順に並べ、次の一手を添えています。
プロンプト例
前提を決めておく
ステージの名前、停滞の判定、出力してよい項目は、毎回伝えなくてもよいように、ファイルにまとめておきます。
Claudeの「プロジェクト」にこのファイルを入れておけば、プロジェクト内のどのチャットでも同じ定義で答えます(What are projects? - Claude Help Center(別タブで開く))。
前提の例
・対象は新規の商談。ステージは、商談化 → デモ → 提案 → 交渉 → 受注・失注の順
・通過率は、30日以上前にそのステージに入った商談のうち、次のステージに進んだ割合
・停滞は、いまのステージにいる日数が、次に進んだ商談の90%が進んだ日数を超えている商談
・顧客は取引先名で表示し、先方の担当者のメールアドレスや電話番号は出力しない
・データで確かめたことと、推測は分けて書く
指示の例
プロンプト例(商談の準備)
明日の〇〇株式会社との商談に備えます。この取引先の商談の履歴、直近3か月のメール、Slackのやり取りから、これまでに合意したこと、まだ決まっていないこと、先方が挙げた懸念を、それぞれ3行以内でまとめてください。
プロンプト例(パイプラインの確認)
私の担当する進行中の商談について、ステージごとに、次のステージに進んだ割合と、次に進むまでの日数の中央値を出してください。あわせて、停滞している商談をステージと止まっている日数(30日以内・31〜90日・91日以上)で分け、件数と金額を表にしてください。
プロンプト例(次の一手)
停滞している商談のうち、いまのステージに入って30日以内のものを、ステージごとに金額の大きい順に2件ずつ挙げてください。各商談について、直近の活動の記録とメールから止まっている理由を推測し、次の一手を1行で提案してください。Salesforceの更新は、私が確認してから行ってください。
プロンプト例(CRMの掃除)
91日以上ステージが変わっていない商談を、担当者ごとに一覧にしてください。失注として閉じるかを担当者に確かめるための、短い確認の文面も作ってください。
数年分の商談をまとめて集計したい場合や、会計・基幹システムの売上と突き合わせたい場合は、BigQueryなどのデータウェアハウスにデータを集める方法が向いています。
BigQueryのデータをClaudeから参照する手順は、「ClaudeとBigQueryを連携する方法|MCPの接続手順と分析例(別タブで開く)」で解説しています。
HubSpotを使っている場合も、HubSpotが提供するClaude用の公式コネクタで、商談の件数や分布、直近の動きを確かめられます。各製品のProfessional・Enterpriseでは、取引が各ステージに入った日時などを記録する「ステージ計算プロパティ」を使って、通過率や滞留日数も集計できます。それ以外のプランの場合や、商談の件数が多い場合は、データを1か所に集める構成が向いています。手順と限界は「ClaudeでHubSpotのデータを分析する方法|接続手順と限界(別タブで開く)」で解説しています。
Salesforce in Claudeを使うときの注意点
ベータ版であること
2026年10月時点で、Salesforce in Claudeはベータ版です。対象の条件、スキルの数や内容、画面の名前は変わる可能性があります。
まずは担当者数名で、商談の準備やパイプラインの確認など、Salesforceを書き換えない使い方から試します。
書き込みは承認してから行う
Salesforce in Claudeは、Salesforceの読み取りだけでなく、商談の更新や活動の記録、タスクの作成もできます。
初期設定では、Claudeは変更を書き込む前に内容を示し、承認を求めます。選択肢は「1回だけ許可」「常に許可」「拒否」です(Use Salesforce in Claude(別タブで開く))。
ステージやクローズ日は、予測やレポートに直接影響します。最初は「常に許可」にせず、1件ずつ確かめる運用にします。
見えるデータは、Salesforceの権限のまま
Claudeは、使う人自身のSalesforceアカウントでサインインし、その人のSalesforceの権限で見られるデータだけを読みます。
自分の担当の商談しか見られない設定であれば、Claudeが集計できるのもその範囲に限られます。
Anthropicの発表では、営業の責任者は同じ集計をチーム全体で行えるとされています(Bringing Salesforce into Claude - Claude(別タブで開く))。
個人情報を絞る
商談の記録には、先方の担当者の氏名や連絡先が含まれます。出力に含めない項目を前提に書いておき、社外に共有するダッシュボードや資料に入らないようにします。
Anthropicは、Team・Enterpriseプランでは、初期設定でデータをモデルの学習に使わないとしています(Bringing Salesforce into Claude - Claude(別タブで開く))。
利用するプランでデータがどう扱われるかを、使い始める前に確かめます。
誤りを確かめる
AIは、記録にない内容を補ったり、数字を取り違えたりすることがあります。
顧客に送る文面や、Salesforceに反映する内容は、担当者が元の記録と照らして確かめます。パイプラインの集計は、最初にSalesforceのレポートと件数が合うかを確かめておくと、その後の結果を信用しやすくなります。
AIでデータを分析する方法の全体像は、「Claudeでデータ分析する方法(別タブで開く)」で解説しています。
まとめ
- Claudeforceは、SalesforceとAnthropicが2026年8月に発表した提携の拡大。その最初の製品が、ClaudeからSalesforceを読み書きできるプラグイン「Salesforce in Claude」
- 商談の準備、商談の確認とクローズの計画、商談後のSalesforceの更新、パイプラインの確認などを、37の営業向けのスキルで行える
- 2026年10月時点ではベータ版で、Salesforceに承認された組織が、Claudeの有料プランで使える。Salesforceの管理者の申し込み、Claudeの管理者の設定、各メンバーのサインインの順に進める
- 書き込みは承認してから行い、見えるデータはSalesforceの権限のまま。CRMの入力が後回しになっていると、集計は実態とずれるため、止まった商談を閉じる作業もあわせて行う
株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。商談の議事録・メール・SFAに分かれた情報を統合し、商談前準備・商談レビュー・提案書作成・プレイブック生成に使えるAIの開発を支援しています。
支援の内容は「セールスAI(別タブで開く)」で、BigQueryの顧客データをSalesforceへ自動で連携し、営業が最新の情報を参照できるようにした事例は「Salesforceに最新の顧客情報を常時反映、営業の手作業を解消(別タブで開く)」で紹介しています。
「Salesforceに商談の記録はたまっているが、準備や振り返りに使えていない」「Salesforceの外にある議事録やメールともつないで、AIに使わせたい」といった課題をお持ちでしたら、お問い合わせください。




