「月初の見込みと月末の着地が、毎月大きくずれる」「パイプラインの金額は十分あるのに、受注が届かない」。営業の責任者や営業企画の方から、このような声をよく聞きます。
今月や今四半期にどれだけ受注できるかを見込むのが、営業の売上予測(フォーキャスト)です。予測が外れると、採用や広告費、資金繰りの判断まで狂います。
売上予測の作り方にはいくつかの方法がありますが、自社の商談でどの方法が当たるかは、過去のデータで確かめないと分かりません。
本記事では、売上予測の主な3つの方法を整理したうえで、過去のある時点で予測して実際の受注額と比べる「バックテスト」の手順を、デモ用のデータでの分析例で紹介します。
あわせて、HubSpotやSalesforceの商談データからClaudeで集計する方法、プロンプト例、注意点を説明します。記載の仕様は2026年10月時点の公式情報に基づきます。
営業の売上予測の3つの方法
| 方法 | 計算のしかた | 長所 | 弱いところ |
|---|---|---|---|
| 担当者の申告 | 担当者が商談ごとに「確度が高い(コミット)」「うまくいけば取れる(ベストケース)」などを申告し、マネージャーが積み上げる | 数字に出ない商談の状況を反映できる | 担当者によって楽観・悲観の癖がある。あとから当たり外れを確かめにくい |
| 加重パイプライン | 未クローズの商談の金額 × ステージごとの受注率 を合計する | CRMのデータだけで、誰が計算しても同じ数字になる | 期間で絞るには、受注予定日の入力に頼る。予定日が更新されないと、止まったままの商談も数える |
| 実績ベース | 過去の商談が、ステージと経過日数ごとに、その月のうちに受注した割合を当てはめる。月の途中にできる商談の分も足す | 予測する期間に受注する分だけを数えられる | ステージの変更履歴が必要。割合を出すのに、ある程度の期間のデータが要る |
担当者の申告(コミット・ベストケース)
担当者が、自分の商談を「コミット(ほぼ確実)」「ベストケース(うまくいけば取れる)」「パイプライン(まだ分からない)」のように分け、マネージャーが積み上げる方法です。多くの営業組織で、週次や月次の会議で使われています。
商談相手の予算の状況や、決裁者との関係など、CRMの項目には出ない情報を反映できるのが強みです。一方で、申告の精度は担当者によって違います。
申告した数字を記録しておかないと、あとから当たり外れを確かめられません。担当者の申告を使う場合は、毎月の申告を残し、後で実績と比べられるようにしておきます。
加重パイプライン
未クローズの商談の金額に、ステージごとの受注率(確度)を掛けて合計する方法です。たとえば、交渉のステージの受注率が76%なら、金額100万円の交渉中の商談は76万円として数えます。
CRMのデータだけで計算でき、担当者の主観が入りません。ただし、ステージの受注率は「そのステージに入った商談が、いつかは受注する割合」です。今月に受注するかどうかは区別しません。
そのため実務では、受注予定日が予測する期間(今月・今四半期)に入る商談だけを加重するのが一般的です。この場合、精度は受注予定日の入力に左右されます。予定日が更新されないまま残ると、何か月も動いていない商談も、同じ受注率で数えてしまいます。
実績ベース(ステージと経過日数から見込む)
過去の商談の動きから、「月初の時点で、あるステージに入ってから何日たった商談が、その月のうちに受注した割合」を出し、いまのパイプラインに当てはめる方法です。
同じ交渉のステージでも、入って3日の商談と60日の商談では、今月に受注する見込みは違います。経過日数で分けることで、止まったままの商談を自然に低く見込めます。
受注までの日数が短い商材では、月の途中にできる商談からの受注も無視できません。過去の月で、月初のパイプラインになかった商談からの受注額を出し、その平均を足します。
過去のデータで、予測の方法を比べる(バックテスト)
どの方法が自社の商談で当たるかは、過去のある時点に戻って予測し、実際の受注額と比べて確かめます。これをバックテストと呼びます。手順は次のとおりです。
- 予測の時点と期間を決める:たとえば「毎月1日に、その月の受注額を予測する」
- その時点のパイプラインを復元する:ステージの変更履歴から、その日の時点で未クローズだった商談と、そのときのステージ・経過日数を出す
- その時点より前のデータだけで、受注率や割合を出す:予測する月の結果を、割合の計算に含めない
- 予測と実績を比べる:方法ごとに、誤差(予測 − 実績)÷ 実績 を月ごとに並べる
- 何か月分かを並べて判断する:1か月だけ当たっても、偶然かもしれない
手順3が重要です。予測する月の結果まで使って割合を出すと、実際より当たるように見えてしまいます。本記事の分析例では、予測する月ごとに、その月より前のデータだけで割合を出し直しています。
担当者の申告は、CRMの商談データからは復元できません。比べたい場合は、毎月の申告を記録し、同じ表に並べます。
分析例:予測の方法と、実際の受注額を比べる
ここでは、中小企業向けの人事労務SaaSを想定したデモ用のデータで、CRMの商談とステージの変更履歴から、売上予測の方法を比べた例を示します。
ステージは、商談化 → デモ → 提案 → 交渉 → 受注・失注の順です。データは「営業の歩留まり分析のやり方(別タブで開く)」と同じで、受注までの日数は中央値24日です。担当者の申告はデータにないため、次の4つを比べました。
- 直近3か月の平均:前の3か月の受注額の平均。比べるための基準
- 加重パイプライン:未クローズの商談の金額 × ステージ別受注率。期間で絞らずに、すべての未クローズの商談を数える
- 加重パイプライン(14日以内):同じ計算を、いまのステージに入ってから14日以内の商談だけで行う。デモ用のデータには受注予定日がないため、その代わりに、最近動いた商談だけに絞る
- 実績ベース:未クローズの商談の金額 × ステージと経過日数ごとの「その月のうちに受注した割合」、に月の途中にできる商談の分を足したもの
3月1日時点のパイプラインから、3月の受注額を見込む

Claudeで作成した、パイプラインからの受注額の見込み(デモ用のデータ)
3月1日の時点で、未クローズの商談は882件、金額の合計は11.5億円ありました。このうち、14日以内にステージが動いた商談は135件(15%)だけです。
左の表は、前年6月〜2月の各月1日に未クローズだった商談が、その月のうちに受注した割合です。提案・交渉のステージに入って7日以内の商談は64〜67%が、その月のうちに受注しています。一方、いまのステージに入ってから15日以上たった商談は、どのステージでも1件もその月に受注していません。
このデータでは、次のステージに進む商談は中央値6日で進みます(営業の歩留まり分析のやり方(別タブで開く))。15日以上動いていない商談は、実際には止まっていると考えられます。ただし、15日以上の区分がすべて0%になるのは、このデモ用のデータの性質です。実際のデータでは0%にならないことが多いため、15〜30日・31日以上のように分けて割合を確かめます。
その結果、4つの方法の見込みは次のように分かれました。
- 期間で絞らない加重パイプラインは4.5億円です。止まっている85%の商談にも、ステージ別受注率(26〜76%)を掛けているためです
- 14日以内に動いた商談だけを加重すると、6,851万円です
- 実績ベースの見込みは6,033万円です。このうち819万円(14%)は、3月1日の時点ではまだない商談からの受注です
- 直近3か月(12〜2月)の平均は4,567万円です
各月1日の予測を、実際の受注額と比べる
同じ計算を、10月から3月までの各月1日に行い、実際の受注額と比べました。割合や平均は、予測する月より前のデータで、毎月出し直しています。4月は、このデモ用のデータでは3月以降にできた商談の多くがまだ受注・失注になっておらず、実績が少なく出るため、比べる月から外しました。

Claudeで作成した、売上予測のバックテスト(デモ用のデータ)
加重パイプラインは、期間で絞らずに使うと、どの月も実績の3.8〜9.1倍と大きく外れました。止まったままの商談が月を追うごとに増える(10月1日の365件から3月1日の882件)ため、外れ方もおおむね大きくなっています。
同じ加重でも、14日以内に動いた商談だけに絞ると、誤差は-19%〜+28%で、誤差の絶対値の平均は17%でした。大きく外れた原因は、加重という考え方ではなく、期間で絞っていないことです。受注予定日で絞る場合も、予定日が更新されずに残っていれば、同じように膨らみます。
実績ベースの誤差は-23%〜+17%で、平均11%でした。直近3か月の平均は-28%〜+11%で、平均16%です。
ただし、比べたのは6か月だけです。期間で絞った3つの方法(加重(14日以内)・実績ベース・直近3か月の平均)の差は、偶然の範囲かもしれません。実績ベースと直近3か月の平均は、受注が多かった10月を2割以上低く見込んでいます。
このデータから言えるのは、次の2つです。
- 加重パイプラインは、予測する期間に受注しそうな商談に絞ってから使う。期間で絞らずにすべての未クローズの商談を数えると、大きく外れる
- 期間で絞った方法どうしの差は、6か月では断定できない。実績ベースの利点は、「どのステージの、どの商談から、いくら受注する見込みか」まで分解でき、月の途中にできる商談の分も分けて見られることで、月初の会議で、見込みを支える商談を担当者と確認できる
3月の実績ベースの予測は誤差0%でしたが、これはたまたまです。1か月の結果で方法を選ばず、何か月分かの誤差を並べて判断します。
Claudeで売上予測を集計する方法
バックテストに必要なデータは、次の2つです。
- 商談:作成日、金額、いまのステージ、担当者
- ステージの変更履歴:各商談が、いつどのステージに入ったか。受注・失注した日もここから取る
ステージの変更履歴がないと、過去の時点のパイプラインを復元できません。いまの状態だけでは、「3か月前の時点で、どの商談がどのステージにいたか」が分からないためです。
HubSpotを使っている場合
HubSpotは、Claude用の公式コネクタを提供しています。接続の手順と、コネクタで集計できる範囲は「ClaudeでHubSpotのデータを分析する方法|接続手順と限界(別タブで開く)」で解説しています。
ステージの履歴には、取引の「ステージ計算プロパティ」(各ステージに入った日時など)を使います。設定と、使えるプランは「営業の歩留まり分析のやり方(別タブで開く)」で説明しています。
HubSpotには、売上予測のための「予測ツール」もあります。2026年10月時点のナレッジベースでは、次のように案内されています(Use the forecast tool - HubSpot ナレッジベース(別タブで開く)、Set up the forecast tool - HubSpot ナレッジベース(別タブで開く))。
- Sales HubまたはService HubのProfessional・Enterpriseで使える。SalesまたはServiceのシートが割り当てられている必要がある
- 月次か四半期ごとに、担当者が予測を提出できる
- 取引を「コミット」「ベストケース」などの予測カテゴリで分けられる
- 取引の金額に、取引の確度を掛けた「加重金額」で集計できる
担当者の申告は予測ツールで提出・記録し、実績ベースの見込みやバックテストは、取引とステージの履歴からClaudeで集計する、という分け方ができます。
Salesforceを使っている場合
Salesforceを使っている場合は、Salesforceが提供する「Salesforce in Claude」で、Claudeから商談とパイプラインを扱えます。2026年10月時点ではベータ版で、Salesforceに承認された組織が使えます。
使える条件と、止まっている商談を見つける分析例は「ClaudeでSalesforceの商談を分析する方法|Salesforce in Claudeの使い方(別タブで開く)」で解説しています。
件数が多い場合は、BigQueryに集めて集計する
バックテストでは、月ごとにパイプラインを復元するため、商談とステージの履歴を何度も集計し直します。商談が数千件ある場合は、CRMのデータをBigQueryなどのデータウェアハウスに集めて、Claudeから集計するのが向いています。本記事の分析例も、この形で集計しています。
BigQueryのデータをClaudeから参照する手順は「ClaudeとBigQueryを連携する方法|MCPの接続手順と分析例(別タブで開く)」で解説しています。
予測と実績を比べるには、予実の定義を先にそろえておく必要があります。当社が支援したピクシーダストテクノロジーズ株式会社様では、Dataformで商談・顧客・予実の粒度と命名をそろえ、誰が集計しても同じ結果になる形にしました(「予実管理の属人化と運用コストを解消、リアルタイム意思決定へ(別タブで開く)」)。
プロンプト例
前提を決めておく
売上予測は、予測の時点、受注日の取り方、止まっている商談の扱いで数字が変わります。前提をファイルにまとめ、Claudeの「プロジェクト」に入れておけば、プロジェクト内のどのチャットでも同じ前提で答えます(What are projects? - Claude Help Center(別タブで開く))。
前提の例
・予測するのは、各月1日の時点での、その月の受注額。受注額は、その月に受注のステージに入った商談の金額の合計
・受注日・失注日は、ステージの変更履歴で受注・失注に入った日を使う
・その時点のパイプラインは、ステージの変更履歴から復元する。経過日数は、いまのステージに入ってからの日数で、0〜7日・8〜14日・15日以上に分ける
・受注率や割合は、予測する月より前のデータだけで出す
・データで確かめたことと、推測は分けて書く
指示の例
プロンプト例(今月の見込み)
今月1日の時点で未クローズの商談を、ステージと経過日数で分けて、件数と金額を表にしてください。過去12か月の各月1日の商談が、その月のうちに受注した割合をステージと経過日数ごとに出し、今月の受注額を見込んでください。月の途中にできる商談からの受注は、直近3か月の平均で足してください。
プロンプト例(バックテスト)
過去6か月の各月1日について、その時点のパイプラインを復元し、「直近3か月の平均」「加重パイプライン」「14日以内に動いた商談だけの加重パイプライン」「ステージと経過日数ごとの割合」の4つの方法で、その月の受注額を予測してください。割合は、予測する月より前のデータだけで出してください。月ごとの予測・実績・誤差と、誤差の絶対値の平均を表にしてください。
プロンプト例(申告との比較)
添付した過去6か月の担当者別の申告(コミット・ベストケース)を、同じ月の実績と、ステージと経過日数から出した見込みと並べてください。担当者ごとに、申告が実績より高い月・低い月の数を数えてください。
プロンプト例(データの確認)
集計の前に、金額が空欄の商談、ステージを飛ばして進んだ商談、受注・失注の後に別のステージに戻った商談の件数を出してください。あわせて、月ごとの受注件数を並べ、極端に少ない月がないかを確かめてください。
最後のプロンプトのように、月ごとの受注件数も先に確かめておきます。CRMへの入力が遅れている月があると、その月の実績が少なく出て、どの方法も外れたように見えるためです。
売上予測を作るときの注意点
ステージの定義をそろえる
実績ベースも加重パイプラインも、「ステージ」が同じ意味で使われている前提で成り立ちます。担当者によって「提案」に進める基準が違うと、ステージごとの割合は、商談の進み方ではなく入力の癖を表すことになります。
ステージを進める基準をチームでそろえてから、割合を出します。基準を変えた場合は、変えた後のデータで割合を出し直します。
止まっている商談を、見込みに数えない
分析例では、3月1日時点の未クローズの商談の85%が、15日以上動いていませんでした。こうした商談を見込みに数えると、パイプラインの金額は実態より大きく見えます。
予測の方法を工夫するとともに、長く動いていない商談は、再開の意思を確認し、なければ失注として閉じる運用もあわせて行います。
金額の変更履歴を残す
商談の金額は、提案や交渉の中で変わります。いまの金額だけを使うと、過去の時点の予測を正しく復元できません。
分析例のデータには金額の変更履歴がないため、いまの金額を使っています。CRMで金額の変更履歴を取れる場合は、予測の時点の金額を使います。
大型案件は分けて見る
金額が平均の何倍もある商談が1件あると、受注するかどうかで、その月の実績も予測も大きく動きます。
大型案件は、割合で見込む対象から外し、担当者の申告と個別の確認で扱います。割合で見込むのは、件数の多い通常の商談に絞ります。
件数が少ないと、割合も誤差も安定しない
ステージと経過日数で細かく分けるほど、1つの区分の商談は少なくなります。分析例でも、8〜14日の区分は、割合を出した9か月分を合わせても、ステージごとに25〜93件で、受注は7〜12件です。
区分の商談が少ない場合は、区分をまとめるか、割合を出す期間を延ばします。予測の誤差も、数か月分だけで方法の優劣を決めず、比べる月が増えたら見直します。
AIでデータを分析する方法の全体像は、「Claudeでデータ分析する方法(別タブで開く)」で解説しています。
まとめ
- 営業の売上予測には、担当者の申告、加重パイプライン、ステージと経過日数の実績から見込む方法がある。どれが当たるかは、過去の時点で予測して実績と比べるバックテストで確かめる
- バックテストでは、ステージの変更履歴から過去の時点のパイプラインを復元し、予測する月より前のデータだけで割合を出す
- 分析例では、加重パイプラインを期間で絞らずに使うと、止まっている商談まで数えるため、実績の3.8〜9.1倍になった。14日以内に動いた商談に絞ると誤差は平均17%で、実績ベース(11%)・直近3か月の平均(16%)との差は、6か月だけでは断定できない
- HubSpotは公式コネクタとステージ計算プロパティ、Salesforceは「Salesforce in Claude」で、Claudeから商談を集計できる。担当者の申告は、HubSpotの予測ツールなどで記録して比べる
- ステージの定義をそろえ、止まっている商談と大型案件を分けて扱い、件数の少ない区分では差を断定しない
株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。CRMの商談データとステージの履歴を集め、売上予測の見込みやバックテストをClaudeで集計できる環境の構築も支援しています。
支援の内容は「セールスAI(別タブで開く)」で紹介しています。
「月初の見込みと月末の着地が毎月ずれる」「パイプラインの金額を、どこまで見込みに数えてよいか分からない」といった課題をお持ちでしたら、お問い合わせください。




