Claude Managed Agentsを使うと、リードの振り分け・選別、Salesforceの更新、返信や商談後のフォローの下書きを、決まった時刻に自動で進められます。担当者は、できあがった下書きを確かめ、直して送ることに時間を使えます。
Anthropicの日本の営業チームでは、BDR(新規の見込み客に最初に接触する担当者)が6つのエージェントでこの仕組みを組み、約60時間分の作業を任せられたと報告しています(1週間の作業の記録をもとにした本人の試算)。
本記事では、Claude Managed Agentsとは何か、Anthropicの営業チームの2つの事例、営業で組むときの構成と手順、費用、注意点を、公式の情報をもとに整理します。記載の仕様は2026年10月時点の公式情報に基づきます。
Claude Managed Agentsとは
Claude Managed Agentsは、Claudeをエージェントとして動かすための仕組みを、Anthropicがクラウドで提供するサービスです(Claude Managed Agents overview(別タブで開く))。2026年4月8日に発表され、2026年10月時点ではベータ版です(Claude Managed Agents - Claude(別タブで開く))。
エージェントの処理の繰り返しや、ツールの実行、実行環境を自分で作る必要はありません。営業の定型業務を自動で回すときは、主に次のものを設定します。
| 用意するもの | 中身 |
|---|---|
| エージェント | モデル、指示(システムプロンプト)、使うツール、MCPサーバー、スキル |
| 環境 | エージェントが動く場所。Anthropicが用意するクラウドの実行環境か、自社のサーバー |
| スケジュール | エージェントを決まった時刻に動かす設定(スケジュール デプロイ) |
| ボールト | SalesforceやSlackなどにつなぐための認証情報の保管場所 |
| メモリーストア | エージェントが実行をまたいで読み書きする知識や修正の記録 |
MCPは、AIが外部のサービスのデータを読み書きするための接続の仕組みです。SalesforceやSlackはMCPサーバーを提供しており、エージェントから商談の記録やチャンネルを扱えます。
Claudeのスケジュールタスクとの違い
Claudeのアプリにも、登録した指示を決まった頻度で動かす「スケジュールタスク」があります。違いは次のとおりです。
| Claudeのスケジュールタスク | Claude Managed Agents | |
|---|---|---|
| 設定する場所 | Claudeのアプリの画面 | Claude Console(開発者向けの管理画面)とAPI |
| 料金 | Claudeのプラン(Pro・Max・Team・Enterprise)の範囲 | 使った分だけ(後述) |
| 実行の頻度 | 毎時・毎日・毎週・平日のみ・手動から選ぶ | cronの書式で分単位まで指定できる |
| 向いている使い方 | 1人で使う定型の作業を試す | 複数のエージェントを、チームで安定して動かし続ける |
AnthropicのBDRも、最初はClaudeのアプリでスキルとスケジュールタスクを使って試し、エージェントが増えて管理しにくくなってからManaged Agentsに移しています。
スケジュールタスクの使い方は、「Claudeで広告レポートを自動化する方法(別タブで開く)」で解説しています。
Anthropicの営業チームの使い方
Anthropicは、自社の営業チームでの使い方を2つ公開しています。
事例1:インバウンドの問い合わせに答える購買エージェント
1つ目は、問い合わせや料金のページから来た見込み客に、最初の質問から購入まで対応するエージェントです(How Anthropic’s sales team rebuilt inbound with Claude Managed Agents(別タブで開く)、2026年9月30日公開)。
- 背景:毎月数万件の問い合わせがあり、BDRが追いつかなかった。資料を読めば分かる質問に答える時間も多かった
- すること:要件を聞き、見込み客を見極め、合うプランを勧める。小さなチームには高いプランではなく合うプランを勧める。大きな案件や複雑な案件は、理由を添えて営業担当に引き継ぐ
- 作り方:エンジニア1人が数週間で最初の版を作った。指示は、営業とコンテンツの責任者がClaude Consoleで直接直し、まず検証用のエージェントで試してから反映した
- 結果:エージェントから引き継いだリードは、以前のフォームからのリードと比べて、商談になる割合が2倍以上、成約までが約5日短い。人が対応しないと成約できない引き継ぎは約半分に減った
事例2:日本のBDRが6つのエージェントで1日の仕事を回す
2つ目は、Anthropicの日本の営業チームのBDRが、自分の1日の仕事を6つのエージェントに分けた事例です(How an Anthropic Japan business development representative runs his day(別タブで開く)、2026年10月16日公開)。
以前は、毎朝2時間ほどをリードの振り分けと選別に使い、メールやCRMの更新が1日以上遅れることもあったそうです。
| エージェント | 動く時刻 | すること | モデル |
|---|---|---|---|
| 振り分け(Furiwake) | 朝いちばん | その日の問い合わせを読み、担当者の負荷・優先度・空き状況から担当を決め、Slackに報告する | Sonnet |
| 選別(Sabaki) | 振り分けの後 | 自分に割り当てられたリードを見極めて分類し、Salesforceのリードを更新し、最初のメールを下書きする | Opus |
| 返信(Henji) | 1時間ごと | 受信箱を確かめ、日本語か英語で返信を下書きする | Sonnet(難しい判断はOpusに相談) |
| 商談(Shoudan) | 記載なし | 直近の顧客とのやり取りを読み、Salesforceの商談を更新する | Sonnet |
| 残り(Nokori) | 終業時 | 予定表と会議の文字起こしを読み、会議ごとに要約し、フォローアップを下書きする | Opus |
| 取りまとめ役 | 約15分ごと | Slackの依頼用チャンネルを見て、各エージェントの指示と共有の知識を直す。依頼できるのは本人だけ | Opus |
すべての下書きは、本人が確かめ、直してから送っています。料金の質問、慎重に扱う顧客、意図があいまいな依頼は、人に回す設定です。
本人は、エージェントが1週間にこなした作業を記録し、各作業を手でやった場合の時間で数えて、約60時間分の作業になるとしています。本人は開発者ではなく、設定はClaudeが書いたスクリプトをターミナルで実行して進めたとしています。
営業で組むときの構成
2つの事例をもとに、営業チームで組むときの構成を整理します。

1つのエージェントに1つの仕事を任せる
「リードの対応をすべて任せる」1つのエージェントではなく、振り分け・選別・返信・商談の更新のように、仕事ごとにエージェントを分けます。
分けておくと、次の3つを仕事ごとに決められます。
- 動かす時刻:振り分けは朝、返信の確認は1時間ごと、会議の要約は終業時
- モデル:ルールに沿って分ける仕事は小さなモデル、判断が難しい仕事は大きなモデル。すべてを最も大きなモデルにすると費用がかさむ
- 使えるツール:Salesforceを更新するのは選別と商談のエージェントだけ、のように絞る
共有の知識をメモリーストアに置く
製品の説明、料金の考え方、よくある質問への答え方、過去に直した表現などは、メモリーストアに置き、各エージェントが読めるようにします。
メモリーストアは、エージェントが読み書きできるテキストの置き場所です。変更はすべて版として残り、誰がいつ何を変えたかを確かめられます(Using agent memory(別タブで開く))。
AnthropicのBDRは、下書きを直して保存する作業を数百回繰り返して、下書きを自分の文面に近づけたとしています。
送るのは人、という線を引く
顧客に届くメールは、エージェントには送らせず、下書きまでにします。事例1の購買エージェントのように顧客と直接やり取りさせる場合も、大きな案件や判断に迷う案件は、理由を添えて人に引き継ぐ設計にします。
始め方の手順
手順1:Claudeのアプリで、1つの仕事を試す
いきなりManaged Agentsで組まず、まずClaudeのアプリで1つの仕事を試します。どの業務から任せるかの選び方と、AIエージェントの4つの作り方の違いは、「AIエージェント導入の進め方(別タブで開く)」で解説しています。
- 任せたい仕事を1つ選びます(例:前日の問い合わせを読み、優先度を付けて一覧にする)
- 進め方、判断の基準、出力の形をスキルにまとめます
- SalesforceとSlackのコネクタをつなぎ、スケジュールタスクで毎朝動かします
- 1〜2週間、結果を確かめながら、スキルを直します
SalesforceのデータをClaudeから扱う方法は、「ClaudeでSalesforceの商談を分析する方法(別タブで開く)」で解説しています。
手順2:Managed Agentsに移す
仕事が増えて管理しにくくなったら、Managed Agentsに移します。AnthropicのBDRの事例では、次のように対応させています。
| Claudeのアプリで試したもの | Managed Agentsでの置き場所 |
|---|---|
| スキル | エージェントの指示(システムプロンプト) |
| スケジュールタスク | エージェントのスケジュール |
| 共有のフォルダ | メモリーストア |
移すときは、次の順に設定します(Claude Managed Agents overview(別タブで開く))。
- Claude ConsoleでAPIキーを発行します
- エージェントを作り、モデル、指示、使うツール、SalesforceやSlackのMCPサーバーを指定します
- 環境を作ります。通常はAnthropicが用意するクラウドの実行環境を選びます
- ボールトを作り、SalesforceやSlackの認証情報を登録します
- メモリーストアを作り、製品の説明や判断の基準を入れておきます
- スケジュール デプロイを作り、実行の時刻とタイムゾーン(日本なら Asia/Tokyo)を指定します
スケジュール デプロイには、1回の実行で使える費用の上限も設定できます。予定外の時刻に試したいときは、手動で1回だけ実行できます(Scheduled deployments(別タブで開く))。
手順3:指示を直しながら育てる
指示を直すたびに版が残り、スケジュールで動くのはデプロイした版だけです。編集の途中の指示が、朝の実行に混ざることはありません。
AnthropicのBDRは、指示を足し続けるのではなく、今ある指示を書き直すこと、各エージェントに必要な情報だけを渡すことを勧めています。事例1でも、細かいルールを並べた指示より、目的を書いた短い指示のほうがうまくいったとしています。
費用
Claude Managed Agentsの費用は、トークンの料金と実行時間の料金の合計です(Pricing - Claude API Docs(別タブで開く))。
- トークン:通常のClaude APIと同じ料金。2026年10月時点で、Claude Sonnet 5.5は入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル。Claude Opus 5.5は入力4ドル、出力20ドル
- 実行時間:実行中の時間1時間あたり0.08ドル。返信を待っている間など、止まっている時間は数えない
- Web検索:エージェントがWeb検索を使った場合は、1,000回あたり10ドル
公式の計算例では、Claude Opus 5.5で入力5万トークン・出力1.5万トークンを使う1時間の実行は、合計0.58ドルです。
Claudeのアプリの月額のプランとは別に、Claude APIの利用料として請求されます。始める前に、スケジュール デプロイの費用の上限を設定しておきます。
注意点
ベータ版であること
2026年10月時点で、Claude Managed Agentsはベータ版です。機能の名前や設定の方法は変わる可能性があります。
送信と書き込みの範囲を絞る
エージェントは、渡した認証情報でできることは何でも実行できます。SalesforceやSlackの認証情報は、そのエージェントの仕事に必要な権限だけに絞ります。
ボールトに登録した認証情報は、エージェントからは中身が見えません。ボールトや認証情報を削除すれば、エージェントはそれ以降使えなくなります(Authenticate with vaults(別タブで開く))。
外から届いた文面に注意する
問い合わせのフォームやメールには、外部の人が書いた文面が入ります。その中に「この内容を記録して」のような指示が紛れ込むと、エージェントが共有の知識に誤った内容を書き込むおそれがあります。
公式のドキュメントでも、外部の文面を扱うエージェントには、メモリーストアを読み取り専用でつなぐよう勧めています(Using agent memory(別タブで開く))。共有の知識を書き換えるのは、取りまとめ役など、外部の文面を直接読まないエージェントに限ります。
データの保存を確かめる
Claude Managed Agentsは、会話の履歴や実行環境の状態をAnthropicのサーバーに保存します。そのため、2026年10月時点では、データを保存しない契約(Zero Data Retention)の対象外です(Claude Managed Agents overview(別タブで開く))。
リードや商談の記録には、先方の担当者の氏名や連絡先が含まれます。自社の規程で扱えるかを、使い始める前に確かめます。
CRMの記録が整っていることが前提
エージェントがSalesforceを更新できても、リードの項目や商談のステージの定義がそろっていなければ、選別や更新の結果もずれます。何をもって「確度が高い」とするか、どの項目をいつ更新するかを先に決め、指示に書いておきます。
まとめ
- Claude Managed Agentsは、Claudeをエージェントとして動かす仕組みを、Anthropicがクラウドで提供するサービス。2026年10月時点ではベータ版
- Anthropicの営業チームは、問い合わせに答える購買エージェントと、BDRの1日の仕事を分けた6つのエージェントを公開している。後者は、本人の試算で約60時間分の作業を任せている
- 営業で組むときは、1つのエージェントに1つの仕事を任せ、共有の知識をメモリーストアに置き、顧客に送るのは人にする
- まずClaudeのアプリのスキルとスケジュールタスクで1つの仕事を試し、増えてきたらManaged Agentsに移す
- 費用はトークンの料金と、実行中の時間1時間あたり0.08ドル。認証情報の権限を絞り、外部の文面を読むエージェントには共有の知識を書き換えさせない
株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。商談の議事録・メール・SFAに分かれた情報を統合し、商談前準備・商談レビュー・提案書作成・プレイブック生成に使えるAIの開発を支援しています。
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