「リードは増えているのに、受注が増えない」「どのステージで商談が落ちているのか、会議のたびに数字を集め直している」。営業の責任者や営業企画の方から、このような声をよく聞きます。
受注までのどこで商談が減っているかを数字で示すのが、営業の歩留まり分析です。
歩留まりの数字そのものは、CRMの商談とステージの記録があれば計算できます。ただし、分母の取り方や期間の切り方を決めないまま集計すると、同じデータから違う数字が出てしまいます。
本記事では、歩留まりの計算式と、どこで落ちているかを見る切り口を整理したうえで、HubSpotやSalesforceの商談データからClaudeで集計する方法を紹介します。
あわせて、デモ用のデータでの分析例とプロンプト例、集計するときの注意点を説明します。記載の仕様は2026年10月時点の公式情報に基づきます。
営業の歩留まりとは
歩留まりは、ある段階に進んだ件数のうち、次の段階に進んだ件数の割合です。営業では、リードから受注までの各段階で、どれだけの件数が残ったかを表します。
主な指標と計算式
| 指標 | 計算式 | 分かること |
|---|---|---|
| 商談化率 | 商談数 ÷ リード数 | リードのうち、商談に進んだ割合 |
| ステージの通過率 | 次のステージに進んだ商談数 ÷ そのステージに入った商談数 | どのステージで商談が止まるか |
| 受注率 | 受注数 ÷ 商談数 | 商談のうち、受注した割合 |
| リードからの受注率 | 受注数 ÷ リード数 | リード1件あたりの受注の見込み |
| 滞留日数 | 次のステージに進んだ日 − そのステージに入った日 | 各ステージに、どれだけの期間とどまるか |
リードからの受注率は、商談化率と受注率の掛け算です。たとえば、商談化率が20%、受注率が25%なら、リードからの受注率は5%です。
受注率は、会社によって「勝率」と呼んだり、分母を受注・失注の商談だけにしたりします。どちらの定義を使うかで数字が大きく変わるため、後半の注意点で説明します。
ステージの通過率と滞留日数を見る理由
受注率だけを見ても、どこを直せばよいかは分かりません。
ステージごとの通過率を並べると、「デモの後で半分が止まる」のように、落ちている段階が分かります。滞留日数を見ると、「次に進む商談は1週間以内に進む」のような目安ができ、それを超えて動いていない商談を見つけられます。
どこで落ちているかを見る4つの切り口
全体の歩留まりを出したら、次の4つの切り口で分けて比べます。
- ステージ別:どの段階で最も多く落ちているか。手を打つ段階を決める
- 流入元別:広告、自然検索、紹介など、リードの最初の流入元ごとの商談化率と受注率。マーケティングの予算配分の材料になる
- 企業規模別:従業員数などで分けた受注率と平均受注額。営業の体制や、狙う顧客層の判断に使う
- 担当者別:担当者ごとの通過率。受注率の高い担当者の進め方を、チームで共有するきっかけになる
商談化率は、マーケティングと営業の両方が関わる指標です。流入元別に商談化率と受注率を並べると、「リードの数は多いが受注につながらない流入元」が見えてきます。
分析例:リードから受注までの歩留まり
ここでは、中小企業向けの人事労務SaaSを想定したデモ用のデータで、CRMのリード・商談・ステージの変更履歴から歩留まりを集計した例を示します。
ステージは、商談化 → デモ → 提案 → 交渉 → 受注・失注の順です。2025年5〜12月に作成されたリードを対象に、2026年4月30日時点の状態で数えています。

Claudeで作成した、リードから受注までの歩留まり(デモ用のデータ)
この例では、リード5,115件のうち1,046件(20.4%)が商談になり、そのうち270件(25.8%)を受注しています。リードからの受注率は5.3%です。
商談化した後で最も大きく落ちるのは、デモから提案に進む段階で、51%です。ほかのステージでは、76〜84%が次に進んでいます。
次に進んだ商談は、どのステージでも中央値6日で進み、商談化から受注までは中央値24日でした。
一方で、受注・失注のどちらにもなっていない「未クローズ」の商談が634件(61%)あります。受注・失注の商談だけを分母にすると、受注率は66%となり、未クローズを含めた25.8%と大きく食い違います。

Claudeで作成した、流入元・企業規模・担当者別の歩留まり(デモ用のデータ)
同じリードを流入元・企業規模・担当者で分けると、商談化率はどの区分でも19〜22%で、大きな差はありませんでした。
企業規模別では、受注率は501名以上を除いて26%前後で、ほぼ同じです。一方、平均受注額は50名以下の80万円から、501名以上の242万円まで開きます。受注率と受注額は、あわせて見る必要があります。
差が大きいのは、担当者別の受注率(21.0〜32.1%)です。受注率が最も高い担当者Aは、デモから提案に進める割合が55%(受注率が最も低い担当者Dは48%)、交渉から受注する割合が81%(同71%)と、デモ以降の段階で上回っています。
紹介・外部サイトの受注率は15.9%と低く見えますが、商談は44件しかありません。数件の受注で率が大きく動くため、期間を延ばしてから判断します。
企業規模による受注額の差を、どのリードから対応するかに使う方法は「リードスコアリングの作り方(別タブで開く)」で解説しています。
Claudeで歩留まりを集計する方法
歩留まりの集計に必要なデータは、次の3つです。
- リード:作成日、最初の流入元、企業規模、担当者
- 商談:作成日、金額、いまのステージ、受注・失注
- ステージの記録:各商談が、いつどのステージに入ったか
件数や分布を見るだけなら、CRMとClaudeをつなぐだけで足ります。ステージの記録を使う通過率や滞留日数、リードと商談をまたぐ集計は、CRMの設定やデータの置き場所によって、やり方が変わります。
HubSpotの公式コネクタで集計する
HubSpotは、Claude用の公式コネクタを提供しています。2026年10月時点で、HubSpotのすべての製品とプランで利用でき、Claude側は有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)が必要と案内されています(Set up and use the HubSpot connector for Claude - HubSpot ナレッジベース(別タブで開く))。
接続の手順は「ClaudeでHubSpotのデータを分析する方法|接続手順と限界(別タブで開く)」で解説しています。
ステージの記録には、HubSpotの「ステージ計算プロパティ」を使います。取引の各ステージについて、そのステージに入った日時(Date entered)、出た日時(Date exited)、とどまった時間(Latest time in・Cumulative time in)が、取引のプロパティとして自動で記録されます(Use stage calculated properties - HubSpot ナレッジベース(別タブで開く))。
2026年10月時点のナレッジベースでは、ステージ計算プロパティは各製品のProfessional・Enterpriseで使えると案内されています。新しく作ったパイプラインとステージでは初期設定でオフになっているため、パイプラインの設定で有効にしておきます。値は、既存のデータからさかのぼって入ります。
一方で、2026年10月時点のHubSpotのMCPサーバーには、次の制約があります(Integrate AI tools with the HubSpot MCP server - HubSpot Developers(別タブで開く))。
- SQLで集計するツール(
query_crm_data)は、テーブルの結合や、関連付け(アソシエーション)をたどる集計に対応していない - レコードを検索するツール(
search_crm_objects)が返すのは、1ページあたり最大200件
そのため、「リードの流入元ごとに、商談の受注率を出す」のように、コンタクトと取引をまたぐ集計は、Claudeがレコードを取り出して突き合わせることになります。件数が数百件程度なら対応できますが、数千件を超える場合は、次のBigQueryに集める方法が向いています。
件数が多い場合は、BigQueryに集めて集計する
商談が数千件ある場合や、広告費・売上など、CRMの外のデータとあわせて見たい場合は、CRMのデータをBigQueryなどのデータウェアハウスに集めて、Claudeから集計します。
データウェアハウスは、複数のツールのデータを1か所に集めて、まとめて集計するためのデータベースです。本記事の分析例も、この形でリード・商談・ステージの変更履歴を集計しています。
商談をスプレッドシートで管理している場合も、同じようにBigQueryに集められます。当社が支援したピクシーダストテクノロジーズ株式会社様では、スプレッドシートの商談・顧客のデータをBigQueryに取り込み、担当者の手作業だった集計を自動化しました。予実は、Looker Studioのダッシュボードでリアルタイムに確認できるようにしています(「予実管理の属人化と運用コストを解消、リアルタイム意思決定へ(別タブで開く)」)。
HubSpotのデータをBigQueryに集める構成は「ClaudeでHubSpotのデータを分析する方法|接続手順と限界(別タブで開く)」で、BigQueryのデータをClaudeから参照する手順は「ClaudeとBigQueryを連携する方法|MCPの接続手順と分析例(別タブで開く)」で解説しています。
Salesforceを使っている場合
Salesforceを使っている場合は、Salesforceが提供する「Salesforce in Claude」で、Claudeから商談とパイプラインを扱えます。2026年10月時点ではベータ版で、Salesforceに承認された組織が使えます。
使える条件と、停滞している商談を見つける分析例は「ClaudeでSalesforceの商談を分析する方法|Salesforce in Claudeの使い方(別タブで開く)」で解説しています。
プロンプト例
前提を決めておく
歩留まりは、定義が少し違うだけで数字が変わります。ステージの順番、分母、期間、未クローズの扱いを、ファイルにまとめておきます。
Claudeの「プロジェクト」にこのファイルを入れておけば、プロジェクト内のどのチャットでも同じ定義で答えます(What are projects? - Claude Help Center(別タブで開く))。
前提の例
・対象は新規の商談。ステージは、商談化 → デモ → 提案 → 交渉 → 受注・失注の順
・商談化率は商談数 ÷ リード数、受注率は受注数 ÷ 商談数。未クローズの商談も受注率の分母に含める
・期間は、リードの作成日で区切る。受注・失注が出そろうまでの日数がたっていない期間は対象にしない
・商談が50件未満の区分は、率を出したうえで「件数が少ない」と書き添える
・データで確かめたことと、推測は分けて書く
指示の例
プロンプト例(全体の歩留まり)
2025年5〜12月に作成されたリードについて、リード→商談化→デモ→提案→交渉→受注の各段階の件数と、前の段階からの通過率を表にしてください。あわせて、各ステージの滞留日数の中央値と、未クローズの商談の件数を出してください。
プロンプト例(切り口別)
同じリードを、最初の流入元・企業規模・担当者で分けて、リード数、商談化率、受注率、平均受注額を表にしてください。受注率が最も高い区分と低い区分について、どのステージで差がついているかも示してください。
プロンプト例(前の期間との比較)
直近の四半期と、その前の四半期で、ステージごとの通過率を比べてください。5ポイント以上下がったステージについて、流入元・企業規模・担当者のどこで下がっているかを調べてください。
プロンプト例(データの確認)
集計の前に、金額・担当者・最初の流入元が空欄になっている商談の件数と、ステージを飛ばして進んだ商談(例:デモを経ずに提案に入った商談)の件数を出してください。
最後のプロンプトのように、集計の前にデータの入力状況を確かめておくと、結果をどこまで信頼できるかを判断しやすくなります。
歩留まりを分析するときの注意点
ステージの定義をそろえる
「デモを実施したらデモのステージにする」のか、「デモの日程が決まったらデモにする」のか。ステージを進める基準が担当者ごとに違うと、通過率の差は、営業の進め方の差ではなく、入力の仕方の差になります。
ステージを飛ばして進んだ商談や、後から前のステージに戻った商談も、数え方を決めておきます。担当者別に比べる前に、ステージを進める基準をチームでそろえます。
未クローズの商談の扱いを決める
分析例のとおり、受注・失注の商談だけを分母にすると、受注率は大きく見えます。止まったままの商談が多いほど、その差は広がります。
本記事では、未クローズの商談も分母に含める受注率を基本にし、勝率は参考として並べています。どちらを使う場合も、未クローズの件数を必ずあわせて示します。
長く止まっている商談は、再開の意思を確認し、なければ失注として閉じる運用もあわせて行います。CRM上の未クローズが減るほど、歩留まりの数字は実態に近づきます。
止まっている商談を見込みに数えずに今月の受注額を見込む方法は「営業の売上予測(フォーキャスト)の作り方(別タブで開く)」で解説しています。
期間は、結果が出そろうところで切る
直近に作成されたリードは、まだ商談や受注に進む途中です。直近の月まで含めて集計すると、その月の受注率は実際より低く出ます。
分析例では、商談の作成から受注・失注が決まるまでが最長でも37日、リードの作成から商談になるまでが最長でも14日だったため、2026年4月30日時点で結果が出そろっている2025年12月までに作成されたリードだけを対象にしました。自社の商談で、受注までにかかる日数を先に確かめ、その日数がたった期間で区切ります。
また、「リードの作成日」で区切るか、「受注日」で区切るかで、同じ月の数字が変わります。歩留まりを見るときは、リードや商談の作成日で区切るのが基本です。
件数の少ない区分は、差を断定しない
流入元や担当者で細かく分けるほど、1つの区分の件数は少なくなります。商談が数十件の区分では、数件の受注で率が数ポイント動きます。
件数の少ない区分は、期間を延ばすか、区分をまとめてから判断します。
AIでデータを分析する方法の全体像は、「Claudeでデータ分析する方法(別タブで開く)」で解説しています。
まとめ
- 営業の歩留まりは、商談化率・ステージの通過率・受注率・滞留日数で見る。リードからの受注率は、商談化率と受注率の掛け算
- 全体の数字を出したら、ステージ別・流入元別・企業規模別・担当者別に分けて、どこで落ちているかを確かめる。受注率と平均受注額はあわせて見る
- HubSpotは公式コネクタとステージ計算プロパティで、Salesforceは「Salesforce in Claude」で、Claudeから商談を集計できる。件数が多い場合や、リードと商談をまたぐ集計は、BigQueryなどにデータを集める方法が向いている
- ステージの定義、未クローズの商談の扱い、期間の切り方、件数の少ない区分の扱いを先に決め、Claudeに前提として渡す
株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。CRMの商談データと、広告・売上などのデータを統合し、営業の歩留まりや受注までの成果をClaudeで分析できる環境の構築も支援しています。
支援の内容は「セールスAI(別タブで開く)」で、BigQueryの顧客データをSalesforceへ自動で連携し、営業が最新の情報を参照できるようにした事例は「Salesforceに最新の顧客情報を常時反映、営業の手作業を解消(別タブで開く)」で紹介しています。
「営業会議のたびに、歩留まりの数字を手作業で集めている」「流入元や担当者ごとに、どこで商談が落ちているかを把握したい」といった課題をお持ちでしたら、お問い合わせください。




