AIエージェントの導入は、①任せる業務を1つ選ぶ、②使うデータとツールをつなぐ、③下書きまでの小さな形で作り、人が確かめる、④効果を測る、⑤任せる範囲を広げる、の順に進めます。最初の1つが動くまでの期間は、2〜3か月が目安です。
つまずきやすいのは、AIそのものより、その手前です。Anthropicが500名以上の技術リーダーに行った調査では、AIエージェントの課題として「既存システムとの統合」(46%)、「データへのアクセスと品質」(42%)、「業務の変え方」(39%)が上位に挙がっています(2026年、企業における AI エージェント構築の現状 - Claude(別タブで開く))。
本記事では、AIエージェントの作り方の4つの選択肢、導入の5つの手順、期間と費用の内訳、社内で作るか外注するかの判断を整理します。記載の仕様は2026年10月時点の公式情報に基づきます。
AIエージェントとは
AIエージェントは、AIが自分で手順を考え、ツールを使いながら仕事を進める仕組みです。CRMを調べる、メールを下書きする、表を集計するといった操作を、指示に合わせて組み合わせます。
Anthropicは、AIを使った仕組みを次の2つに分けています(Building effective agents - Anthropic(別タブで開く))。
| ワークフロー | エージェント | |
|---|---|---|
| 手順を決めるのは | 人(あらかじめ決めた流れ) | AI(その場で考える) |
| 向いている仕事 | 手順が決まっていて、毎回同じ結果がほしい仕事 | 手順の数が事前に決められない仕事 |
| 費用と速さ | 安く、速い | 手順が増えるぶん、費用と時間がかかる |
同じ記事でAnthropicは、うまくいく最も簡単な方法から始め、効果がはっきりしたときだけ複雑にするよう勧めています。
「AIエージェントを入れる」と決める前に、決まった流れで足りる仕事なのか、AIに判断を任せる仕事なのかを分けておくと、作るものが小さくなります。
AIエージェントの4つの作り方
2026年10月時点で、AIエージェントの作り方は大きく4つに分かれます。
| 作り方 | 例 | 向いている場面 | 費用の形 |
|---|---|---|---|
| ①使っている製品に組み込まれたエージェントを使う | SalesforceのAgentforceなど、CRMやSFAの製品に付いているエージェント | 1つの製品の中で完結する仕事 | 製品のライセンスや、使った量に応じた料金 |
| ②生成AIのアプリの機能で組む | Claudeのスキル・コネクタ・スケジュールタスク | 1人〜1チームで使う定型の仕事を試す | 生成AIのプランの月額 |
| ③エージェントの基盤の上で開発する | Claude Managed Agentsなど | 複数の仕事を、チームで安定して動かし続ける | APIの利用料と実行時間の料金、開発の費用 |
| ④すべて自社で開発する | — | 自社の製品にエージェントを組み込む | 開発と運用の費用 |
上から順に、始めやすく、自由度は低くなります。
①は、データがその製品の中にそろっていれば早く始められます。一方、商談の議事録はZoom、メールはGmail、受注は会計のシステムというように、データが製品の外にあると、エージェントが見られる範囲はその製品の中に限られます。
②は、エンジニアがいなくても試せます。Claudeでは、仕事の進め方をスキルにまとめ、SalesforceやSlackのコネクタをつなぎ、スケジュールタスクで毎朝動かす、といった組み方ができます(「ClaudeでSalesforceの商談を分析する方法(別タブで開く)」)。
③は、②で試した仕事が増えて、1人では管理しにくくなったときの移り先です。Claude Managed Agentsでは、指示の変更が版として残り、認証情報を安全に預け、決まった時刻に動かせます。料金は、通常のAPIの利用料に、実行中の時間1時間あたり0.08ドルが加わります(Pricing - Claude API Docs(別タブで開く))。
②から③に移った事例は、「Claude Managed Agentsで営業の定型業務を自動化する方法(別タブで開く)」で解説しています。
AIエージェント導入の5つの手順

手順1:任せる業務を1つ選ぶ
最初は、次の条件に当てはまる業務を1つだけ選びます。
- 回数が多い:毎日・毎週、同じ形で発生する
- 判断の基準を言葉にできる:「この条件なら優先度を高くする」と書ける
- 間違えても取り返せる:社内向けの下書きや、人が確かめてから使う資料
- 今かかっている時間を測れる:効果を比べる基準になる
営業であれば、問い合わせの振り分け、商談前の情報の整理、議事録の要約とCRMへの記録などが当てはまります。顧客に直接届くメールの送信や、値引きの判断のように、間違えると取り返しにくい仕事は後回しにします。
手順2:使うデータとツールをつなぐ
選んだ業務で、人が今どのデータを見て判断しているかを書き出します。
| 書き出すこと | 例(商談前の情報の整理) |
|---|---|
| 見ているデータ | CRMの取引の履歴、過去の議事録、先方とのメール、類似企業の受注の記録 |
| データの場所 | Salesforce、Zoom、Gmail、会計のシステム |
| つなぐ方法 | 製品のコネクタ、データ基盤への集約、API |
| 見せてよい範囲 | 担当者が見られる範囲だけか、全社分か |
AIエージェントが答えられるのは、渡したデータの範囲までです。データが複数の製品に分かれている場合は、1か所に集めてからAIに渡すほうが、全社・数年分を比べた答えを出せます。
一方、CRMの入力が後回しになっていて記録がそろっていないなら、AIより先に、何をどう記録するかを決める必要があります。データを1か所に集める考え方は、「データ基盤の構築の進め方(別タブで開く)」で解説しています。
手順3:下書きまでの小さな形で作り、人が確かめる
最初の形は、AIが下書きや一覧を作り、人が確かめてから使うところまでにします。
- 出力の形を決めておく(項目・順番・文字数)
- 判断の基準と、人に回す条件を指示に書く(「料金の質問は人に回す」など)
- 間違いを見つけたら、指示や共有の知識に書き足す
1〜2週間、毎回の結果を人が確かめ、指示を直します。Anthropicの日本の営業チームの担当者も、下書きを直して保存する作業を数百回繰り返して、下書きを自分の文面に近づけたとしています。
手順4:効果を測る
手順1で測った時間と比べます。時間だけでなく、次の3つを見ます。
- 時間:その業務にかかる時間が、どれだけ減ったか
- 件数:対応できた件数、対応が遅れた件数
- 品質:人が直した割合、人に回した割合
人が直す割合が下がらない場合は、AIの性能より、渡しているデータや判断の基準が足りていないことが多くあります。
手順5:任せる範囲を広げる
効果が確かめられたら、次の2つの方向に広げます。
- 同じ業務の中で、任せる範囲を広げる:下書きから、条件を満たすものは自動で記録まで
- 別の業務に広げる:振り分けの次に、議事録の要約、という順に1つずつ
業務を増やすときは、1つのエージェントに何でも任せず、仕事ごとにエージェントを分けます。動かす時刻、使うモデル、触れてよいツールを、仕事ごとに決められるからです。
期間と費用の目安
期間
最初の1つが動くまでの期間は、データの状態で大きく変わります。当社が営業のAIを支援するときの目安は次のとおりです。
| 段階 | 期間の目安 | すること |
|---|---|---|
| 現状把握 | 1〜2週間 | 業務とデータの棚卸し、着手する順番の決定 |
| 設計 | 2〜3週間 | 何を自動化し、何を測るかの定義、出力のイメージ |
| 実装 | 1〜2か月 | データの統合と、AIが動く状態まで |
| 定着 | 継続 | 利用状況と効果の振り返り、改善 |
合計で2〜3か月です。商談の記録がまだたまっていない場合は、その前に、記録の設計と運用の整備が加わります。
②の生成AIのアプリの機能で組む場合は、データが製品のコネクタでつながるなら、データの統合を待たずに試し始められます。
費用の内訳
費用は、次の4つに分けて考えます。
| 費用 | 中身 | 発生のしかた |
|---|---|---|
| 利用料 | 生成AIのプラン、製品のライセンス、APIの利用料、実行時間の料金 | 毎月。使う量や人数で変わる |
| データの整備 | データの棚卸し、基盤への集約、定義の統一 | 最初に大きく、その後は追加のたびに |
| 開発 | 指示・ツール・連携の作成、テスト | 最初と、業務を増やすたびに |
| 運用 | 指示の改善、権限の管理、効果の振り返り | 毎月 |
見積もりで差が出やすいのは、データの整備です。データが1か所にそろっていれば開発から始められますが、複数の製品に分かれていれば、つなぐ作業が全体の多くを占めます。
②の作り方でClaudeを組織で使う場合の利用料は、TeamとEnterpriseで仕組みが違います。「Claudeの法人プランの違い(別タブで開く)」で比べています。
社内で作るか、外注するか
判断の目安
| 社内で作る | 外注する | |
|---|---|---|
| データ | 1つの製品の中、またはすでに1か所に集まっている | 複数の製品に分かれていて、つなぐ作業が中心になる |
| 人 | 業務を知る人が、指示を書いて直す時間を取れる | 作る人も、直す時間を取れる人もいない |
| 範囲 | 1部署の中で閉じる仕事 | 部署をまたぐ仕事、顧客に届く仕事 |
| 作り方 | ①②で足りる | ③④が必要 |
①②で試せる仕事は、まず社内で試すのがおすすめです。効果の出る業務や、足りないデータが分かってから外注を考えると、依頼する範囲を絞れます。
外注先に確かめる質問
- データの整備から入るか:AIの開発だけを請け負う会社か、データの棚卸しと統合から一緒に行う会社か
- 特定の製品に縛られないか:今使っているCRMや生成AIのまま作れるか
- 効果をどう測るか:使われているか、時間がどれだけ減ったかを、誰がいつ確かめるか
- 権限と個人情報をどう扱うか:AIが見られる範囲、認証情報の保管、ログの残し方
- 社内に引き継げるか:指示やデータの定義を、社内の人が読める形で残すか
データ分析の外注先の選び方は、「データ分析を外注するときの支援会社の選び方(別タブで開く)」で、10の質問とあわせて解説しています。
つまずきやすい点
最初から自動で送らせる
顧客に届くメールや、CRMの重要な項目の書き換えを、最初から自動にすると、1件の誤りが信用やレポートに直接響きます。最初は下書きまでにし、人が確かめる運用から始めます。
権限を広く渡す
AIエージェントは、渡した権限でできることは何でも実行できます。CRMやメールの権限は、その仕事に必要な範囲だけに絞ります。
現場が使わない
業務の変え方は、Anthropicの調査でも課題の上位に入っています。作る前に、誰が、いつ、どの画面でAIの出力を受け取るかを決めておきます。普段使っているCRMやSlackの中で受け取れる形にすると、使われやすくなります。
効果を測らない
導入の前の時間を測っていないと、効果を説明できず、広げる判断ができません。手順1の時点で、今かかっている時間と件数を記録しておきます。
まとめ
- AIエージェントの導入は、業務を1つ選ぶ、データとツールをつなぐ、下書きまでの形で作り人が確かめる、効果を測る、範囲を広げる、の順に進める
- 作り方は、製品に組み込まれたエージェント、生成AIのアプリの機能、エージェントの基盤、自社開発の4つ。まずは始めやすい方法で試す
- 最初の1つが動くまでは2〜3か月が目安。費用は利用料・データの整備・開発・運用に分けて考え、差が出やすいのはデータの整備
- データが複数の製品に分かれていて、つなぐ作業が中心になる場合は、外注を検討する
株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。商談の議事録・メール・SFAに分かれた情報を統合し、商談前準備・商談レビュー・提案書作成・プレイブック生成に使えるAIの開発を支援しています。
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