「MRRは増えているが、新規が増えたのか、解約が減ったのかは分からない」。サブスクリプション型の事業で決済にStripeを使っていると、このような場面によく出会います。
Stripeのダッシュボードでは、MRRや解約率などの主な指標を確認できます。一方で、広告の流入元やプロダクトの利用データとは結び付かないため、「なぜ変わったのか」までは追いにくいのが実情です。
本記事では、Stripeのダッシュボードで見られる指標とその限界を整理し、Claudeで行う分析の例を、MRRの増減の内訳・プラン別の解約率・決済の失敗の3つの画面で紹介します。
そのうえで、ClaudeからStripeのデータを参照する3つの方法(Stripe公式のMCPサーバー、Stripe Sigma、BigQueryへの取り込み)を比べ、プロンプト例と注意点を解説します。
Stripeのダッシュボードで見られる指標
Stripe Billingの「Billingの概要」では、サブスクリプションの主な指標をグラフで確認できます。2026年10月時点のStripeのドキュメントでは、次の指標が定義されています(アナリティクス(別タブで開く))。
| 指標 | Stripeでの定義(要約) |
|---|---|
| MRR(月間経常収益) | active と past_due のサブスクリプションの、月あたりに直した金額の合計。税金、無料プラン、従量課金、トライアル中のサブスクリプションは含まない |
| MRRの成長率 | 期間の初めのMRRに、新規・再有効化・拡大のMRRを足し、縮小・解約のMRRを引いた正味の変化 |
| 解約された売上 | 期間中の解約のMRRと縮小(ダウングレード)のMRRの合計 |
| 登録者の解約率 | 過去30日に解約した登録者数 ÷(30日前の有効な登録者数 + 過去30日の新規登録者数) |
| ARPU | MRRの合計 ÷ 有効な登録者数 |
| 登録者のLTV | ARPU ÷ 登録者の解約率 |
| トライアルからの契約移行率 | 過去30日に有料に移行したトライアル数 ÷ 過去30日に終了したトライアル数 |
| コホート別の維持率 | 有料の契約を始めた月ごとの、登録者数とMRRの維持率 |
一部のグラフでは、プロダクトや価格で絞り込んだり、グループ化したりできます。
あわせて、顧客ごとのMRRの推移(新規登録・アップグレード・ダウングレード・再有効化・解約)や、月次の指標のサマリーをCSVでダウンロードできます。
ダッシュボードだけでは分からないこと
Stripeのダッシュボードは、決済のデータだけで計算できる指標を確認するには十分です。ただし、施策の判断に使おうとすると、次のような限界があります。
- 広告や流入元と結び付かない:どの広告・キャンペーンから来た顧客が解約しやすいかは、Stripeのデータだけでは分からない
- 利用のデータと結び付かない:解約する前に、ログインや機能の利用が減っていたかを確認できない
- 切り口が限られる:絞り込みやグループ化はプロダクト・価格が中心で、顧客の属性や獲得の時期などでは比べにくい
- 定義が固定されている:たとえば登録者のLTVは「ARPU ÷ 解約率」の簡易式で、契約からの期間によって解約のペースが変わる事業では実態とずれる
簡易式のLTVが実態とずれる理由と、継続率から将来のLTVを予測する方法は、「LTVの計算方法|サブスクで使える3つの式とClaudeで予測する手順(別タブで開く)」で解説しています。
Claudeでできる分析の例
StripeのデータをClaudeから参照できるようにすると、日本語の指示で、ダッシュボードにない切り口の集計ができます。ここでは、動画の学習サービスを想定したデモ用のデータで、3つの分析を紹介します。
データは、Stripeの契約・請求のデータに相当する、プラン・顧客・サブスクリプション・請求・契約のイベントの5つのテーブルです。期間は2025年5月から2026年4月までの12か月です。
MRRの増減を、新規・アップグレード・ダウングレード・解約に分ける
MRRの増減を、契約のイベントの種類ごとに分けて月別に集計します。合計のMRRだけでは見えない、増えた分と減った分の動きが分かります。

Claudeで作成した、MRRの増減の内訳(デモ用のデータ)
この例では、2026年4月末のMRRは809.8万円で、4月の純増は858,030円です。合計だけを見ると順調に伸びています。
内訳を見ると、直近3か月(2026年2〜4月)の新規のMRRは、その前の3か月より25%増えた一方、解約・休止・ダウングレードで失ったMRRは32%増えています。
月初のMRRに対する失ったMRRの割合(レベニューチャーン率)も、2月・3月の4.5%から、4月は4.8%に上がっています。
新規の獲得が続いている間は、このような変化は合計のMRRに表れにくくなります。解約の増加に早く気づくには、増減の内訳を毎月確認します。
プラン別の解約率と、決済の失敗のその後を見る
次に、解約をプラン別に分け、顧客の意思による解約と、決済の失敗による解約を区別します。あわせて、決済に失敗した契約が、その後に回復したのか解約に至ったのかを追います。

Claudeで作成した、プラン別の解約率と決済の失敗の分析(デモ用のデータ)
この例では、直近3か月の月次解約率は、Standard(月額)が6.1%と最も高く、Premium(月額)が4.9%と最も低くなっています。3プランの解約346件のうち、52件(15%)は決済の失敗によるものです。
また、直近6か月に決済に失敗した199件のうち、116件(58%)は回復し、83件は解約に至りました。決済の失敗による解約は、サービスへの不満による解約とは対策が異なるため、分けて追います。
決済の失敗による解約(非自発的な解約)と、Stripe Billingで失敗した決済を自動で再試行する機能については、「チャーン分析のやり方|解約率が悪化する原因をClaudeで特定する手順(別タブで開く)」で解説しています。
広告や利用のデータと結び付ける
Stripeのデータを、広告・GA4・プロダクトの利用のデータと顧客IDで結び付けると、さらに踏み込んだ分析ができます。
- 流入元・キャンペーン別の解約率とLTV
- 無料トライアル中の利用量と、有料への転換率・転換後の継続率
- 広告費と、有料の顧客1人あたりの獲得費用(CAC)
流入元別のLTVとLTV/CACの分析例は「LTVの計算方法(別タブで開く)」で、トライアル中の利用量と継続率の分析例は「チャーン分析のやり方(別タブで開く)」で紹介しています。
ClaudeからStripeのデータを分析する3つの方法
ClaudeからStripeのデータを参照する方法は、主に次の3つです。
| 方法 | 向いている場面 | 広告・利用データとの結び付け | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 方法1:Stripe公式のMCPサーバー | Stripeの定義で、MRRや解約率をすぐに確認する | できない | 分析のツールはプレビュー。自由なSQLにはSigmaが必要 |
| 方法2:Stripe Sigma | Stripeのデータだけで、SQLで自由に集計する | できない | 有料。SQLを書くアシスタントは英語のみ |
| 方法3:BigQueryに取り込んでClaudeから参照する | 広告・利用・CRMのデータと結び付けて、継続して分析する | できる | 取り込みの仕組みと、指標の定義の設計が必要 |
方法1:Stripe公式のMCPサーバー
Stripeは、公式のMCP(Model Context Protocol)サーバー(https://mcp.stripe.com)を公開しています。
2026年10月時点では、Claude Codeでは次のコマンドで追加し、/mcp コマンドからOAuthで認証します(Model Context Protocol (MCP)(別タブで開く))。
claude mcp add --transport http stripe https://mcp.stripe.com/
WebのClaudeとClaude Desktopでは、公式のStripeのコネクタを追加し、OAuthで権限を付与して使えます。TeamプランとEnterpriseプランでは、メンバーが接続する前に、所有者がワークスペースにコネクタを追加する必要があります。
分析には stripe_analytics のツールを使います。2026年10月時点のStripeのドキュメントでは、次の3種類の使い方が案内されています(AI で Stripe データを分析(別タブで開く))。
| 使い方 | できること | 提供の状況 |
|---|---|---|
| 指標のクエリ | MRR、チャーンレート、アクティブな登録者数など、Stripeが定義する指標を期間を指定して取得する | Private preview |
| サブスクと請求の分析 | 解約率や登録者数などのテンプレートを、プロダクト別・価格別に実行する | Public preview |
| SQLクエリ | レポート用のテーブルにSQLを実行する。Sigmaの契約が必要 | Public preview |
stripe_analytics は、Stripeの定義どおりの値を返すため、ダッシュボードと数字がそろいます。
一方で、同じドキュメントには、エージェントが元のデータから独自に指標を計算すると、Stripeの公式の計算結果と異なる場合があると書かれています。たとえば、サブスクリプションの金額を合計してMRRを推定すると、StripeのMRRの定義と一致しません。
方法2:Stripe Sigma
Stripe Sigmaは、Stripeのダッシュボード上で、決済・サブスクリプション・顧客などのデータにSQLを実行できる機能です。データは読み取り専用で、既存のデータを変更することはできません(Sigma の仕組み(別タブで開く))。
2026年10月時点では、自然言語の指示からSQLを作るアシスタントがありますが、英語の質問にのみ回答します。クエリは日次・週次・月次で定期実行でき、結果をメールなどで受け取れます(クエリを作成する(別タブで開く))。
Sigmaは有料の機能で、サンドボックス(テスト環境)では無料で試せます。前述のとおり、MCPサーバーからSQLを実行する場合も、Sigmaの契約が必要です。
なお、Sigmaのテンプレートは協定世界時(UTC)で日付を区切ります。日本時間で月別に集計する場合は、クエリで時刻を変換します。
方法3:BigQueryに取り込んでClaudeから参照する
広告・利用・CRMのデータと結び付けて分析する場合は、StripeのデータをBigQueryなどのデータウェアハウスに取り込み、ほかのデータと顧客IDで結び付けます。取り込みの方法は、主に次の2つです。
Stripe Data Pipeline:Stripeが提供する取り込みの機能です。
2026年10月時点では、送信先としてBigQuery、Snowflake、Amazon Redshift、Databricksに対応しています(Data Pipeline の仕組み(別タブで開く))。
データの共有を承認すると12時間以内にStripeのデータにアクセスでき、その後は3時間ごとにデータ全体が更新されます。有料の機能で、30日間の無料トライアルがあります(料金(別タブで開く))。
Fivetranなどのデータ連携ツール:広告やCRMのデータもあわせて取り込む場合は、Fivetranなどのツールでそろえる方法もあります。
2026年10月時点で、FivetranのStripeのコネクタは、サブスクリプションの変更の履歴を SUBSCRIPTION_HISTORY のテーブルに残せます(Stripe connector by Fivetran(別タブで開く))。
Fivetranの機能と料金は「Fivetranとは?広告データ統合でできること・料金・始め方(別タブで開く)」で、BigQueryのデータをClaudeから参照する手順は「ClaudeとBigQueryを連携する方法|MCPの接続手順と分析例(別タブで開く)」で解説しています。
MRRの増減の内訳を集計するには、プランの変更や解約がいつ起きたかの履歴が必要です。取り込んだデータに履歴が含まれるかを、最初に確認します。
当社が支援した株式会社Azoop様では、GA4・Salesforce・プロダクトのデータベース(契約情報と利用ログ)のデータを、Fivetranで自動で取り込み、dbtで整えて、Snowflakeに集めました。手作業での集計がなくなり、契約と利用を合わせた顧客ごとのヘルススコアを算出できるようになっています(「ヘルススコアの可視化で解約防止とデータドリブンCSを実現(別タブで開く)」)。
Claudeで分析する手順
ここでは、方法3でBigQueryに取り込んだデータを分析する場合の手順を紹介します。方法1・方法2でも、指標の定義を決めてから依頼する流れは同じです。
1. 指標の定義を決める
MRRや解約率は、数え方によって値が変わります。Stripeのダッシュボードの数字と比べる場合も、社内で使う定義を先に決めておきます。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| MRR | 年額プランを月額に換算するか。割引を差し引くか。決済の失敗中(past_due)を含めるか |
| MRRの増減の分類 | 新規・アップグレード・再開・ダウングレード・休止・解約の、どのイベントをどれに数えるか |
| 解約率 | 分母を月初の契約数にするか、Stripeのように期間中の新規を加えるか。休止を解約に含めるか |
| 決済の失敗 | 失敗した時点を解約とするか、再試行が尽きて契約が終わった時点を解約とするか |
| 月の区切り | 日本時間で区切るか、UTCで区切るか |
解約率の定義と数え方の違いは、「チャーン分析のやり方(別タブで開く)」で解説しています。
2. 定義を前提としてClaudeに渡す
決めた定義は、Claudeに毎回伝えなくてもよいように、ファイルにまとめておきます。Claudeの「プロジェクト」にこのファイルを入れておけば、プロジェクト内のどのチャットでも同じ定義で集計できます。
前提の例
・MRRは、activeとpast_dueのサブスクリプションの月額換算の合計。年額プランは12で割る
・MRRの増減は、新規・アップグレード・再開・ダウングレード・休止・解約の6つに分ける
・月次解約率は、月初に有料で契約中だった顧客のうち、その月に解約した割合
・解約の理由が決済の失敗のものは、非自発的な解約として分ける
・月は日本時間で区切る
3. 切り口を指定して依頼する
「Stripeのデータを分析して」とだけ依頼するよりも、指標と切り口を指定したほうが、実務で使える回答になります。
プロンプト例
直近12か月のMRRの増減を、新規・アップグレード・再開・ダウングレード・休止・解約に分けて、月別の表と積み上げ棒グラフにしてください。直近3か月とその前の3か月で、新規と失ったMRRの増え方を比べてください。
プロンプト例
直近3か月の月次解約率を、プラン別に表にしてください。解約は、顧客の意思による解約と決済の失敗による解約に分け、それぞれの率と失ったMRRを示してください。
プロンプト例
直近6か月に決済に失敗したサブスクリプションについて、失敗した月ごとに、回復した件数、解約に至った件数、回復率、解約で失ったMRRを集計してください。
プロンプト例
流入元別に、有料の顧客数、3か月後の継続率、平均のMRRを比べてください。流入元は customers テーブルの first_source を使ってください。
4. 結果を確かめる
Claudeが集計した数字は、使う前に次の点を確認します。
- Stripeの数字との差:月末のMRRや有効な登録者数が、Stripeのダッシュボードと大きくずれていないか。ずれる場合は、定義のどこが違うかを確認する
- 期間と時刻:月の区切りが、日本時間とUTCのどちらになっているか
- 集計の方法:どのテーブルのどの列を使い、どう計算したか
数字だけでなく、使ったSQLや計算の手順も出力させると、確認しやすくなります。
注意点
個人情報を必要な範囲に絞る
Stripeの顧客のデータには、氏名・メールアドレス・住所などの個人情報が含まれます。Claudeに渡すデータは分析に必要な項目に絞り、顧客はIDで扱います。
BigQueryに取り込む場合は、Claudeから参照するテーブルやビューを分け、個人情報の列を含めないようにしておきます。
MCPサーバーには書き込みの権限を与えない
StripeのMCPサーバーには、データを読み取るツールのほかに、返金やサブスクリプションの変更などを行う書き込みのツール(stripe_api_write)もあります。
2026年10月時点のStripeのドキュメントでは、ツールの実行前に確認する設定を有効にすることと、ほかのMCPサーバーと併用するときのプロンプトインジェクションへの注意が案内されています。
分析だけが目的なら、OAuthの同意画面やAPIキーで、分析とレポートの読み取りの権限だけを付与します。
なお、2026年10月31日以降、StripeのMCPサーバーは、フルアクセスのシークレットキーと、Agentのタグのない制限付きのAPIキーを受け付けなくなります。
APIキーで接続している場合は、新しいエージェントキーに置き換えるか、OAuthで接続し直します(Model Context Protocol (MCP)(別タブで開く))。
集計の結果は仮説として扱う
「Standardのプランの解約率が高い」という結果が出ても、プランそのものが原因とは限りません。プランを選ぶ顧客の層や、獲得した時期の違いが影響している可能性もあります。
見つけた傾向は、解約時のアンケートや、施策の前後の比較で確かめます。
まとめ
- Stripeのダッシュボードでは、MRR・解約率・ARPU・LTVなどの指標を確認できる。ただし、広告や利用のデータとは結び付かず、切り口も限られる
- Claudeで分析すると、MRRの増減の内訳、プラン別の解約率、決済の失敗のその後など、合計の数字だけでは見えない変化を日本語の指示で集計できる
- 接続の方法は、Stripeの定義の指標をすぐに確認する公式のMCPサーバー、SQLで自由に集計するSigma、広告・利用のデータと結び付けるBigQueryへの取り込みの3つ
- 分析の前に、MRRや解約率の定義と月の区切りを決め、前提としてClaudeに渡す。個人情報は渡さず、MCPサーバーには読み取りの権限だけを与える
株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。決済・プロダクトの利用・CRM・広告のデータを統合し、MRRや解約率、LTVをClaudeやChatGPTで分析できる環境の構築も支援しています。
支援の内容は「マーケティング分析(別タブで開く)」で、契約情報と利用ログを統合して解約防止に活かした事例は「ヘルススコアの可視化で解約防止とデータドリブンCSを実現(別タブで開く)」で紹介しています。
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