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LTVの計算方法|サブスクで使える3つの式とClaudeで予測する手順

佐藤 恒株式会社INVOX 代表取締役 CEO

「広告で1人の顧客を獲得するのに、いくらまでかけてよいか」。サブスクリプション型の事業でこの問いに答えるには、1人の顧客が契約から解約までにもたらす売上、つまりLTV(顧客生涯価値)を知る必要があります。

LTVの計算式はいくつかあり、どれを使うかで結果が変わります。よく使われる簡易式は手軽ですが、解約率が一定であることを前提にしているため、実態とずれることがあります。

本記事では、LTVの定義と3つの計算式を計算例とともに解説します。

そのうえで、継続率から将来のLTVを予測する手順と、顧客層別にLTVとLTV/CACを比べる方法を紹介します。あわせて、契約・決済データをClaudeから参照できるようにし、日本語の指示でLTVを計算・予測する方法も解説します。

LTV(顧客生涯価値)とは

LTV(Life Time Value)は、1人の顧客が取引を始めてから終えるまでに、企業にもたらす価値の合計です。日本語では「顧客生涯価値」と呼ばれます。

サブスクリプション型の事業では、有料の契約を始めてから解約するまでに支払う金額の合計を指すのが一般的です。

LTVは、次のような判断の根拠になります。

  • 顧客の獲得にかけてよい費用の上限:LTVを上回る費用をかけて獲得すると、その顧客からは利益が出ない
  • 広告や流入元の評価:獲得単価(CPA)が安くても、すぐに解約する顧客ばかりなら、事業への貢献は小さい
  • 解約防止・単価向上の施策の効果:解約率や顧客単価の変化が、将来の売上にどれだけ効くかを金額で比べられる

顧客1人の獲得にかかった費用はCAC(Customer Acquisition Cost)と呼びます。LTVとCACを比べることで、集客への投資が回収できているかを判断できます。

LTVの計算方法:3つの式

LTVの計算には、主に次の3つの式が使われます。

計算式 式 向いている場面
式1:売上で見る簡易式 平均顧客単価 ÷ 月次解約率 全体の規模感をすばやく把握する
式2:粗利で見る簡易式 平均顧客単価 × 粗利率 ÷ 月次解約率 獲得にかけてよい費用(CACの上限)を考える
式3:継続率から積み上げる 経過月ごとの継続率 × 平均顧客単価 を足し合わせる 解約のペースが時期で変わる事業。顧客層別に比べる

式1:平均顧客単価 ÷ 月次解約率

最も広く使われる簡易式です。

LTV = 平均顧客単価(月額)× 平均継続期間

平均継続期間 = 1 ÷ 月次解約率

この2つをまとめると、「平均顧客単価 ÷ 月次解約率」になります。月次解約率が5%なら、平均継続期間は20か月です。

たとえば、平均顧客単価が月2,000円、月次解約率が5%であれば、LTVは2,000円 ÷ 0.05 = 40,000円です。

解約率の計算方法と、解約率が悪化したときの原因の調べ方は、「チャーン分析のやり方|解約率が悪化する原因をClaudeで特定する手順(別タブで開く)」で解説しています。

式2:粗利率をかける

式1は売上のLTVです。獲得にかけてよい費用を考えるときは、売上から原価を引いた粗利で見ます。

LTV(粗利)= 平均顧客単価 × 粗利率 ÷ 月次解約率

先ほどの例で粗利率が70%なら、LTVは40,000円 × 0.7 = 28,000円です。売上のLTVを基準にCACの上限を決めると、原価の分だけ費用をかけすぎることになります。

原価には、商品の仕入れや配送費のほか、決済手数料、サーバーなどの運用費、コンテンツの制作費など、顧客が増えるほど増える費用を含めます。どこまで含めるかを社内で決めておき、LTVを比べるときは同じ定義を使います。

式3:継続率から積み上げる

有料の契約を始めた顧客が、1か月後・2か月後……に何%残っているかを集計し、各月の継続率に平均顧客単価をかけて足し合わせる方法です。

LTV = Σ(経過月ごとの継続率 × 平均顧客単価)

たとえば、継続率が1か月目100%、2か月目95%、3か月目90%で、平均顧客単価が月2,000円なら、3か月目までの累計は2,000円 ×(1.00 + 0.95 + 0.90)= 5,700円です。これを36か月分など、決めた期間まで足し合わせます。

式1・式2のように解約率が一定であるとは仮定しないため、契約直後に解約が多く、その後は落ち着くといった実際の動きを反映できます。後述するように、まだ観測できていない先の月は、直近の解約のペースで延長して予測します。

定期通販の場合

定期通販のように購入のたびに金額が変わる事業では、次の式もよく使われます。

LTV = 平均購入単価 × 平均購入回数 × 粗利率

この場合も、初回の購入で離脱する顧客が多い、2回目以降は継続しやすいといった動きがあるため、購入回数ごとの継続率(何回目まで続いたか)から積み上げると、実態に近い値になります。

計算する前に決めておくこと

LTVは、定義によって値が大きく変わります。期間や顧客層で比べるときは、次の点を先に決めておきます。

項目 決めること
売上か粗利か CACと比べるなら粗利。社内の報告で売上を使う場合は、どちらかを明記する
予測の期間 36か月など上限を決める。上限がないと、解約率が低い顧客層のLTVが過大になる
年額プラン 一括で払う年額プランは、月額に換算するか、月額プランと分けて計算する
無料トライアル 有料に転換した顧客だけを対象にするか、トライアルの登録者全体を対象にするか
顧客単価 割引、プランの変更、追加購入を含めるか
解約の数え方 一時休止や、決済の失敗による契約の終了を解約に含めるか

とくに、無料トライアルの扱いは結果を大きく変えます。有料に転換した顧客だけでLTVを計算した場合、CACも「広告費 ÷ 有料に転換した顧客数」で計算し、分母をそろえます。

簡易式が実態とずれる理由

式1・式2の簡易式は、毎月同じ割合で解約が起きることを前提にしています。しかし、サブスクリプション型の事業では、多くの場合、契約から数か月の解約が多く、長く続けている顧客ほど解約しにくくなります。

このため、全体の平均の解約率で計算すると、次のようなずれが起きます。

  • 長く続ける顧客の売上を少なく見積もる:初期の高い解約率が、ずっと続く前提になる
  • 新規の顧客の比率で値が変わる:獲得を増やした月は、解約しやすい契約直後の顧客が増えるため、全体の解約率が上がり、LTVが下がって見える
  • 事業を始めて間もないと計算できない:長く続けた顧客がまだいないため、解約率が安定しない

全体の規模感をつかむには簡易式で十分ですが、広告の予算配分や、顧客層別の比較に使う場合は、式3の継続率から積み上げる方法をおすすめします。

継続率から将来のLTVを予測する手順

式3でLTVを予測する手順は、次の通りです。

  1. 有料の契約を始めた月ごとに顧客をまとめる:契約から1か月後・2か月後……に、契約が続いている顧客の割合(継続率)を集計する
  2. 経過月ごとの継続率を求める:各月の継続率を、その月まで経過した顧客だけで平均する。まだ経過していない顧客を含めると、継続率が高く見える
  3. 観測できない先の月を延長する:データの期間を超える月は、後半の数か月の解約のペースが続くと仮定して延長する
  4. 平均顧客単価をかけて足し合わせる:決めた期間(たとえば36か月)までの累計を、1人あたりのLTVとする

次の画面は、動画の学習サービスを想定したデモ用のデータで、月額プランの有料会員3,338人のLTVを予測したものです。

月額プランの有料会員の継続率カーブと、1人あたりの累計売上のグラフ。12か月目までは実績、それ以降は4か月目以降の解約のペースで36か月まで延長した予測。簡易式のLTVは37,500円、継続率から予測した36か月のLTVは39,600円

Claudeで作成した、継続率からのLTVの予測(デモ用のデータ)

この例では、直近3か月の月次解約率は5.6%で、簡易式のLTVは37,500円です。

一方で、継続率を経過月ごとに見ると、有料に転換してから3か月目までは月平均5.8%が解約し、4か月目以降は3.6%に下がっています。このペースで36か月まで延長すると、LTVは39,600円になり、36か月を過ぎても増え続けます。

予測は、観測できた期間が短いほど、延長する部分の比重が大きくなり、不確かになります。予測した値は、新しい月のデータが入るたびに計算し直し、実績とのずれを確認します。

顧客層別にLTVとLTV/CACを比べる

全体のLTVが分かったら、顧客層ごとに分けて比べます。同じ平均顧客単価でも、継続率が違えばLTVは大きく変わります。

トライアル中の利用度別と流入元別のLTVの表。トライアル中によく利用した会員の36か月LTVは41,600円、ほぼ利用しなかった会員は21,900円。Google広告のLTV/CACは3.2、Meta広告は2.6。Yahoo!広告・TikTok広告・X広告はCACが5万円を超え、LTV/CACは0.4〜0.5

Claudeで作成した、顧客層別のLTVとLTV/CAC(デモ用のデータ)

利用の状況で分ける

この例では、14日間の無料トライアルの期間によく利用した会員の36か月のLTVは41,600円で、ほとんど利用しなかった会員の21,900円の約2倍です。

トライアル中の利用を増やすオンボーディングの施策は、転換率だけでなく、転換後のLTVも高める可能性があります。

SaaSであれば主要な機能の利用やログインの頻度、定期通販であれば初回の商品の使用状況など、継続に効きそうな行動で顧客を分けて比べます。

こうした行動を組み合わせ、顧客ごとの状態を点数にしたものがヘルススコアです。作り方は、「ヘルススコアとは?作り方と運用方法|解約を防ぐ指標をClaudeで設計する手順(別タブで開く)」で解説しています。

流入元で分け、LTV/CACを見る

LTV/CACは、粗利のLTVをCACで割った値です。1を下回ると、獲得にかけた費用を回収できていません。

一般に、3倍以上がひとつの目安とされますが、事業の成長段階や資金の状況によって適切な水準は変わります。自社の過去の値と比べて、変化を捉えます。

この例では、Google広告のLTV/CACは3.2、Meta広告は2.6です。Yahoo!広告・TikTok広告・X広告は、粗利のLTVはGoogle広告・Meta広告と大きく変わらない一方、CACが5万円を超えるため、LTV/CACは0.4〜0.5にとどまり、36か月たっても獲得の費用を回収できません。

なお、直近2週間に登録したトライアルは有料転換が確定していないため、この例のCACはやや高めに出ています。

あわせて、粗利の累計がCACを上回るまでの月数(回収期間)も確認します。LTV/CACが同じでも、回収期間が長いほど、獲得を増やしたときに必要な資金が増えます。

回収期間の計算方法と、媒体別に比べる手順は「CAC回収期間の計算方法(別タブで開く)」で解説しています。

流入元ごとのCACは、広告費を、その広告から獲得した有料の顧客数で割って計算します。

広告の管理画面のコンバージョン数は、無料トライアルの登録や、媒体の計測ルールで数えた値であることが多く、有料の契約数とは一致しません。契約・決済のデータと、顧客ごとの流入元を結び付けて計算します。

LTVの使い方

計算したLTVは、次のような判断に使います。

使い方 判断の例
CPAの上限を決める 粗利のLTVが28,000円で、LTV/CACを3倍以上に保ちたいなら、有料の顧客1人あたりの獲得費用は約9,300円まで
広告の予算配分 CPAだけでなく、流入元別のLTV/CACと回収期間で、予算を増やす媒体を決める
解約防止の施策の優先順位 LTVの低い顧客層の継続率を上げたときに、将来の売上がどれだけ増えるかを試算する
プランや価格の見直し 年額プランへの切り替えや値上げで、継続率と顧客単価がどう変わるかを比べる

当社が支援したGOOPASS株式会社様では、顧客・購買データをBigQueryに統合してLTVの予測モデルを作り、長く高い価値をもたらすロイヤルカスタマーを特定しました。担当者の経験や勘に頼っていた施策の判断を、LTVを根拠に行えるようになり、どの顧客層に重点的に投資するかを議論できるようになっています(「LTV予測と重点顧客の特定で、根拠ベースの施策判断ができる状態に(別タブで開く)」)。

CPAの上限の考え方は「CPAとは?悪化の原因と改善方法|Claudeで要因を特定する手順(別タブで開く)」で、定期購入を含めたROASの目標の決め方は「ROASとは?悪化の原因と改善方法|Claudeで要因を特定する手順(別タブで開く)」で解説しています。

ClaudeでLTVを計算・予測する方法

ここまでの計算を手作業で行うには、決済サービス・CRM・広告のデータを書き出し、顧客IDで突き合わせ、経過月ごとの継続率を集計する必要があります。

データを1か所に統合してClaudeから参照できるようにしておけば、日本語の指示で計算でき、顧客層の切り替えもすぐにできます。

必要なデータを集める

LTVの計算と顧客層別の比較には、次のデータを組み合わせます。

データ 主な項目 保存されている場所の例
契約・決済 有料の契約の開始日、解約日、プラン、請求額、決済のステータス Stripeなどの決済サービス
獲得 最初の流入元、キャンペーン、広告費 GA4、Google広告・Meta広告などの広告の管理画面
利用 ログイン、機能の利用、視聴・購入の履歴 プロダクトのデータベース、ECのシステム
原価 商品の原価、配送費、決済手数料 会計のデータ、社内の管理表

単発で計算するだけなら、決済サービスから書き出したCSVをClaudeに添付する方法でも分析できます。決済にStripeを使っている場合の接続方法は、「ClaudeでStripeのデータを分析する方法|MRRの内訳・解約率と3つの接続方法(別タブで開く)」で解説しています。

毎月LTVを更新したり、広告費と結び付けたりする場合は、各システムのデータをBigQueryなどのデータウェアハウスに自動で取り込み、顧客IDで結び付けておきます。

BigQueryのデータをClaudeから参照する手順は、「ClaudeとBigQueryを連携する方法|MCPの接続手順と分析例(別タブで開く)」で解説しています。

LTVの定義を前提として渡す

前述の「計算する前に決めておくこと」は、Claudeに毎回伝えなくてもよいように、ファイルにまとめておきます。Claudeの「プロジェクト」にこのファイルを入れておけば、プロジェクト内のどのチャットでも同じ定義で計算できます。

前提の例
・LTVは、有料に転換した顧客1人あたりの粗利の累計。粗利率は70%とする
・予測の期間は、有料に転換してから36か月
・年額プランは月額に換算し、月額プランと分けても集計する
・一時休止は解約に含めない。決済の失敗による契約の終了は解約に含める
・CACは、広告費 ÷ その広告から獲得した有料の顧客数。流入元は customers テーブルの first_source を使う

指示の例

計算の方法と比べる顧客層を指定して依頼します。

プロンプト例
月額プランの有料会員について、直近3か月の月次解約率と平均顧客単価から、簡易式のLTVを計算してください。あわせて、有料に転換してからの経過月ごとの継続率を集計し、36か月のLTVを予測してください。観測できない月は、4か月目以降の解約のペースで延長してください。

プロンプト例
流入元別に、有料の顧客数、CAC、36か月の粗利のLTV、LTV/CAC、回収期間を表にしてください。LTV/CACが3を下回る流入元があれば、継続率と顧客単価のどちらが原因かも示してください。

プロンプト例
無料トライアル中の利用時間で会員を3つに分け、それぞれの有料への転換率、6か月後の継続率、36か月のLTVを比べてください。

結果を確かめる

Claudeが計算したLTVは、使う前に次の点を確認します。

  • 対象の人数:集計の対象になった顧客の数が、決済サービスの管理画面などの数字と大きくずれていないか
  • 定義:年額プラン、無料トライアル、一時休止を、決めた定義の通りに扱っているか
  • 予測の比重:観測できた月数に対して、延長して予測した部分がどれだけあるか

数字だけでなく、どのテーブルのどの列を使い、どう計算したかも出力させると、確認しやすくなります。

また、契約や決済のデータには個人情報が含まれます。Claudeに渡すデータは分析に必要な項目に絞り、氏名やメールアドレスは顧客IDに置き換えておきます。

まとめ

  • LTVは、1人の顧客が契約から解約までにもたらす価値の合計。サブスクリプション型の事業では、獲得にかけてよい費用や広告の評価の根拠になる
  • 計算式は「平均顧客単価 ÷ 月次解約率」の簡易式、粗利率をかける式、経過月ごとの継続率から積み上げる式の3つ。CACと比べるときは粗利で見る
  • 簡易式は解約率が一定であることを前提にしているため、契約直後の解約が多い事業では実態とずれる。予算配分や顧客層別の比較には、継続率から積み上げる方法を使う
  • 契約・決済・獲得・利用のデータを統合してClaudeから参照できるようにすれば、LTVの予測や流入元別のLTV/CACを、日本語の指示で計算できる

株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。契約・決済・プロダクトの利用・CRM・広告のデータを統合し、LTVや解約率をClaudeやChatGPTで分析できる環境の構築も支援しています。

支援の内容は「マーケティング分析(別タブで開く)」で、LTVの予測を支援した事例は「LTV予測と重点顧客の特定で、根拠ベースの施策判断ができる状態に(別タブで開く)」で紹介しています。

「LTVを計算したいが、契約データと広告データが結び付いていない」「流入元ごとのLTVを見て予算を配分したい」といった課題をお持ちでしたら、お問い合わせください。

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