お問い合わせ

マーケティング

KPIツリーの作り方|売上を掛け算・足し算で分解し、どこが動いたかをデータで見る手順

佐藤 恒株式会社INVOX 代表取締役 CEO

KPIツリーは、売上などの最終目標(KGI)を、掛け算と足し算で指標に分解し、木の形に並べた図です。たとえば「売上 = 顧客数 × 顧客あたりの単価」のように分けていくと、売上を動かすには、どの指標を動かせばよいかがわかります。

作っただけでは役に立ちません。毎月、実際の数字を入れて前の期間と比べ、どの枝の指標が動いたかを確かめて、はじめて施策の判断に使えます。

本記事では、KPIツリーの作り方の手順と、業態別の例を紹介します。そのうえで、サブスクのデモ用のデータで、MRRのKPIツリーに実際の数字を入れ、前の月と比べた例を紹介します。

KPIツリーとは

KPIツリーは、いちばん上に最終目標を置き、その下に、最終目標を決める指標を、式で成り立つように分けて並べたものです。

用語 意味 例
KGI(Key Goal Indicator) 最終的に達成したい目標 月の売上、MRR
KPI(Key Performance Indicator) KGIを達成するために、途中で追う指標 新規の顧客数、転換率、解約率

KPIツリーの要点は、上の指標と下の指標が式でつながっていることです。

MRR = 有料会員数 × 1人あたりの単価(ARPPU)

このように式でつながっていれば、下の指標の数字から、上の指標の数字を計算し直せます。上の指標が動いたとき、どの下の指標が原因かを、数字で確かめられます。

KPIツリーの作り方

手順1:KGIを1つ決める

いちばん上に置く最終目標を1つ決めます。サブスクならMRR、ECなら月の売上、BtoBなら受注金額などです。

KGIが2つ以上あると、木が2本になります。利益まで見たい場合は、「利益 = 売上 − 費用」として、頂点のすぐ下で売上と費用に分けます。

手順2:掛け算か足し算で分ける

KGIを、掛け算か足し算で、2〜3個の指標に分けます。

  • 掛け算:売上 = 顧客数 × 顧客あたりの単価
  • 足し算:顧客数 = 新規の顧客 + 既存の顧客

分けた指標を全部合わせると、上の指標に戻ることが大事です。漏れや重なりがあると、上の指標が動いた理由を説明しきれなくなります。

手順3:自社で動かせる指標まで分ける

担当者が施策で動かせる指標になるまで、さらに分けます。たとえば「新規の顧客数」は、そのままでは動かし方がわかりません。「申し込みの数 × 申し込みからの転換率」まで分けると、広告やLPで申し込みを増やすのか、オンボーディングで転換率を上げるのか、という打ち手につながります。

3〜4段で止めるのが目安です。段が深すぎると、毎月の確認に時間がかかります。

手順4:指標の定義を決めて、データで値を入れる

指標ごとに、計算の定義を決めます。

  • 何を数えるか(例:解約に休止を含めるか)
  • いつの時点で数えるか(月末の人数か、月の合計か)
  • どのデータから取るか(決済のデータ、CRM、GA4など)

定義を決めたら、実際のデータで値を入れます。値を入れたら、下の指標から上の指標を計算し直し、実際の値と一致するかを確かめます。

手順5:前の期間と比べ、どの枝が動いたかを見る

毎月、同じ定義で値を入れ、前の月と比べます。上の指標の変化を、どの下の指標が生んだかを、上から順にたどります。

各指標に担当を決めておくと、動いた指標について、誰が理由を調べるかがはっきりします。

業態別のKPIツリーの例

サブスク(BtoC)

MRR = 有料会員数 × ARPPU
有料会員数 = 月初の会員 + 新規の有料転換 + 再開 − 解約・休止
新規の有料転換 = トライアルが終わった人数 × 転換率

ARPPUは、主にプランの構成(上位プランの割合、年額プランの割合)と価格で決まります。ARPPUの計算方法は「ARPUとは(別タブで開く)」で、MRRの数え方は「MRRとは(別タブで開く)」で解説しています。

BtoBのSaaS

新規の受注金額 = 受注件数 × 1件あたりの金額
受注件数 = 商談数 × 受注率
商談数 = リード数 × 商談化率

既存の顧客の売上は、NRR(売上継続率)や解約率で分けます。営業の段階ごとの率の出し方は「営業の歩留まり分析のやり方(別タブで開く)」で、カスタマーサクセスのKPIツリーは「カスタマーサクセスのKPIの決め方(別タブで開く)」で解説しています。

EC・定期通販

売上 = 注文数 × 客単価
注文数 = 新規の注文 + リピートの注文
新規の注文 = サイトへの訪問 × 購入率

定期通販では、2回目の購入に進む割合(F2転換率)を、リピートの枝に置くこともあります。

デモ用のデータで、KPIツリーに値を入れる

ここからは、当社が用意した架空の動画学習サービス「Lumina」のデモ用のデータで、MRRのKPIツリーに2026年4月の値を入れ、3月と比べた例を紹介します。14日間の無料トライアルのあと、有料に転換する仕組みのサービスです。

指標の定義は次のとおりです。

  • MRR・有料会員・ARPPUは月末の値。年額プランは12で割った月額で数える
  • 新規の有料転換・再開・解約・休止は、その月の件数の合計
  • トライアル終了 = その月にトライアルが終わった人数(有料に転換した人と、転換せずに終わった人の合計)
  • 転換率 = 新規の有料転換 ÷ トライアル終了
  • 解約率 = 解約・休止の件数 ÷ 月初の有料会員

どの段も、下の指標から上の指標を計算し直せます。4月は次のとおりです。

  • 有料会員:3,523人(月初)+ 548人(新規)+ 15人(再開)− 153人(解約・休止)= 3,933人
  • 新規の有料転換:1,660人(トライアル終了)× 33.0%(転換率)= 548人
  • MRR:3,933人 × 2,059円(ARPPU)= 809.8万円

なお、「カスタマーサクセスのKPIの決め方(別タブで開く)」では、同じデモ用のデータで、解約率を顧客の単位(月末にMRRが0になった顧客の割合)で、有料転換率をトライアルを始めた月の単位で数えています。数え方が違うため、本記事の数字とは一致しません。

MRRのKPIツリーの画面。2026年4月のMRRは809.8万円で3月から11.9%増。有料会員は3,933人(+11.6%)、ARPPUは2,059円(+0.2%)。有料会員の下に、月初の会員3,523人、新規の有料転換548人(+3.2%)、再開15人、解約・休止153人(+17.7%)。その下に、トライアル終了1,660人(+10.4%)× 転換率33.0%(−2.3ポイント)と、解約率4.3%(+0.1ポイント)。ARPPUの下に、Premiumの割合24.3%と年額プランの割合35.6%

Claudeで作成したMRRのKPIツリー(デモ用のデータ)

上から順にたどる

4月のMRRは809.8万円で、3月から11.9%増えました。

  1. MRRの下:有料会員が11.6%増え、ARPPUは0.2%の増加でほぼ横ばいです。MRRの伸びは、会員数の増加によるものです
  2. 有料会員の下:新規の有料転換が3.2%増えた一方、解約・休止も17.7%増えています
  3. さらに下:新規の有料転換の下では、トライアルを終えた人が10.4%増えましたが、転換率は35.3%から33.0%に2.3ポイント下がりました。解約率は4.2%から4.3%にやや上がっています

MRRの伸びに隠れた変化

MRRだけを見ると、4月は順調に伸びた月です。しかし、KPIツリーを下までたどると、次の2つの変化が見つかります。

  • 転換率の低下:新規の有料転換の数は増えました。しかし、それはトライアルを終えた人が増えたためで、転換率は下がりました
  • 解約・休止の増加:会員が増えたぶん件数が増えるのは自然です。ただ、解約率もわずかに上がりました

1か月の差は、偶然の範囲のこともあります。数か月の推移で、下がり続けているかを確かめます。下がり続けている場合は、トライアルに来た人の流入元が変わり、有料に進みにくい人が増えた可能性があります。次に確かめるのは、流入元別の転換率です。流入元ごとの率の比べ方は「ファネル分析のやり方(別タブで開く)」で、解約の理由の調べ方は「チャーン分析のやり方(別タブで開く)」で解説しています。

このように、KPIツリーは「上の指標が伸びたか」ではなく、「どの枝がどう動いたか」を見るために使います。

KPIツリーを作るときの注意点

式が成り立つかを、数字で確かめる

図の上では分けられているように見えても、実際の数字で計算し直すと、上の指標と一致しないことがあります。定義のずれ(月末の人数と月の平均を混ぜている、など)が原因です。値を入れたら、下から上へ計算し直して一致するかを確かめます。

割合と件数を両方見る

割合だけ、件数だけを見ると、判断を誤ります。上の例でも、転換率は下がりましたが、件数は増えています。KPIツリーには、件数とその下の割合を並べて置きます。

指標を増やしすぎない

思いつく指標を全部入れると、毎月の確認が追いつきません。施策で動かせて、毎月値が取れる指標に絞ります。

定義を途中で変えない

指標の定義を変えると、前の期間と比べられなくなります。変える場合は、過去の期間も同じ定義で計算し直します。

ClaudeでKPIツリーを集計する方法

必要なデータ

サブスクのKPIツリーなら、次のデータが必要です。

  • 契約のデータ:トライアルの開始・有料への転換・プランの変更・休止・解約の日と、変更の前後の月額
  • プランの価格表:月額・年額の定価

決済サービスのデータの扱い方は「ClaudeでStripeのデータを分析する方法(別タブで開く)」で解説しています。

前提として渡すこと

前提の例
・MRR = 有料会員数 × ARPPU。有料会員数 = 月初の会員 + 新規の有料転換 + 再開 − 解約・休止
・MRR・有料会員・ARPPUは月末の値。年額プランは12で割った月額で数える
・転換率 = 新規の有料転換 ÷ その月にトライアルが終わった人数
・解約率 = 解約・休止 ÷ 月初の有料会員
・月は日本時間で区切る

指示の例

プロンプト例
前提の定義で、今月と先月のKPIツリーの各指標を計算し、ツリーの形の図にしてください。各指標に先月からの変化(件数と金額は%、割合はポイント)を付け、悪くなった指標を色で示してください。

プロンプト例
有料会員数が、月初の会員 + 新規の有料転換 + 再開 − 解約・休止 と一致するかを確かめてください。一致しない場合は、差の原因になっているイベントを調べてください。

プロンプト例
今月、転換率が下がった理由を調べるため、トライアルの流入元別に、トライアルを終えた人数と転換率を、過去6か月の推移で比べてください。

まとめ

  • KPIツリー:KGIを掛け算と足し算で指標に分解した図。上と下の指標が式でつながっていることが大事
  • 作り方:KGIを1つ決める → 掛け算か足し算で分ける → 動かせる指標まで分ける → 定義を決めて値を入れる → 前の期間と比べる
  • 使い方:上の指標が伸びたかではなく、どの枝がどう動いたかを見る。デモ用のデータでは、MRRが11.9%伸びた月に、転換率が2.3ポイント下がっていた(1か月の差は数か月の推移で確かめる)
  • 注意点:式が数字で成り立つかを確かめる。割合と件数を両方見る。指標を増やしすぎない。定義を途中で変えない

KPIツリーに毎月値を入れるには、指標ごとのデータが、同じ定義でそろっている必要があります。広告・アプリ・決済・CRMのデータが別々のツールに分かれていると、毎月の集計に時間がかかり、定義も人によってずれていきます。

株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。広告やGA4、CRM、決済のデータをBigQueryに統合し、KPIツリーの各指標を同じ定義で毎月見られる環境の構築を支援しています。

「KPIツリーは作ったが、毎月の値を入れられていない」「指標の定義が部署ごとに違う」といった課題をお持ちでしたら、お問い合わせください。

CONTACT

「事業成長に繋がるデータ活用」ならINVOXへ

相談する

何から手を付ければいいか分からない段階でも構いません。現状を伺い、次にやるべきことをお伝えします。

お問い合わせ

資料ダウンロード

サービスごとに、提供内容・支援実績・進め方と費用の目安をまとめています。社内での検討や共有にお使いください。

資料ダウンロード