「カスタマーサクセス(CS)のKPIは、解約率だけでよいのか」「NRRを目標にしても、日々の活動に落とし込めない」。CSの体制を整えるときに、よく聞かれる悩みです。
CSの成果は、最終的には売上の継続(NRR)や解約率に表れます。ただし、これらは結果が出るまでに時間がかかり、毎週の活動の目標には向きません。
本記事では、CSのKPIを「結果の指標」と「先に動く指標」に分けて整理する方法を解説します。
そのうえで、KPIツリーの作り方と、デモ用のデータで月次のKPIを集計した例、契約・請求データからClaudeで毎月同じ定義で集計する方法と注意点を紹介します。
カスタマーサクセスのKPIは2種類に分けて考える
CSのKPIは、次の2種類に分けると整理しやすくなります。
| 種類 | 主な指標 | 動くタイミング | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| 結果の指標 | NRR、GRR、解約率、LTV | 解約や契約の変更があってから | 経営や部門の目標、四半期・年次の評価 |
| 先に動く指標 | 有料転換率、アクティベーション率、利用度、ヘルススコア | 顧客の行動が変わった時点 | CSの担当者の週次・月次の目標、打ち手の評価 |
結果の指標だけを目標にすると、施策の効果がわかるのが数か月後になります。先に動く指標だけを追うと、その指標が解約や拡大につながっているかがわからなくなります。両方を、つながりがわかる形で並べておくことが大切です。
結果の指標
NRR(売上継続率)とGRR
NRR(Net Revenue Retention)は、ある時点の顧客から得ている売上が、一定期間後にどれだけ残っているかを表します。上位プランへの変更などの拡大を含めるため、100%を超えることもあります。
GRR(Gross Revenue Retention)は、拡大を足さずに、解約と縮小だけを反映した継続率です。
計算方法と、拡大・縮小・解約に分けて見る方法は、「NRRとGRRの計算方法(別タブで開く)」で解説しています。
解約率
解約率は、期首の顧客のうち、期間中に解約した顧客の割合です。顧客数で数える解約率と、MRR(月次の売上)で数える解約率があります。
解約率が悪化したときの原因の調べ方は、「チャーン分析のやり方(別タブで開く)」で解説しています。
LTV
LTV(顧客生涯価値)は、1人の顧客から得られる粗利の累計です。CSの施策で解約率が下がれば、LTVが上がり、広告などで顧客を獲得するときにかけられる費用も増えます。
計算方法は「LTVの計算方法(別タブで開く)」で解説しています。
先に動く指標
有料転換率とアクティベーション率
無料トライアルのあるサービスでは、トライアルを始めた人のうち有料に転換した割合(有料転換率)が、CSが最初に関わる指標になります。
アクティベーション率は、登録した人のうち、最初に価値を体験した人の割合です。「〇日以内に〇回」のような行動の条件で定義します。条件の決め方は「アクティベーションの指標の決め方(別タブで開く)」で解説しています。
利用度とヘルススコア
ログインの頻度や、主要な機能の利用回数などの利用度は、解約の前に下がることが多い指標です。複数の利用度を組み合わせて点数にしたものを、ヘルススコアと呼びます。
作り方と運用方法は「ヘルススコアとは?作り方と運用方法(別タブで開く)」で解説しています。
アップセルの兆し
上位プランの機能に近い使い方をしている顧客や、利用の上限に近づいている顧客の数は、拡大(NRRを押し上げる要素)の先に動く指標です。見つけ方は「アップセルのタイミングをデータで決める方法(別タブで開く)」で解説しています。
KPIツリーで整理する
KPIツリーは、頂点に置いた指標を、それを構成する指標に分解して並べた図です。CSでは、NRRを頂点に置くと整理しやすくなります。
- 頂点:NRR(売上の継続)
- 分解した指標:解約率、縮小、拡大、GRR
- 先に動く指標:有料転換率、アクティベーション率、利用度・ヘルススコア、アップセルの兆し
架空の動画学習のサブスクリプションサービス「Lumina」のデモ用のデータで、2026年4月の数値を入れたKPIツリーは次のとおりです。

Claudeで作成した、カスタマーサクセスのKPIツリー(デモ用のデータ)
NRRが96.0%だった場合、その内訳を見ると、解約・休止による減少が大きく、拡大(3.5万円)は縮小(3.3万円)とほぼ同じです。つまり、NRRを上げるには、まず解約率を下げることが効きます。
そこで、解約の前に下がる利用度やヘルススコアを、CSの担当者の日々の目標にします。このように、ツリーで分解すると、どの先に動く指標に力を入れるべきかを決めやすくなります。
右の列のアクティベーション率や利用度は、行動の条件を自社で決める必要があるため、数値を入れていません。条件を決めたら、同じツリーに加えて毎月追います。
月次のKPIを同じ定義で集計する
KPIは、毎月同じ定義で集計して並べることで、変化に気づけます。月によって数え方が変わると、改善したのか、数え方が変わったのかがわからなくなります。
Luminaのデモ用のデータで、2025年11月〜2026年4月の月次のKPIを集計した例です。

Claudeで作成した、カスタマーサクセスの月次KPI(デモ用のデータ)
解約率(顧客数)は、2025年11月の5.1%から、2026年1月以降は4%前後に下がっています。GRRも93.9%から95.5%前後に上がりました。
一方、有料転換率は33〜36%で、大きな変化はありません。解約は減っているものの、新しい顧客の転換には改善の余地がある、と読めます。
なお、ここでのNRR・GRR・解約率は、1か月の月次の値です。年次の値とは大きさが違うため、目標を決めるときは、月次か年次かをそろえます。
ClaudeでCSのKPIを毎月集計する方法
必要なデータ
- 契約・請求のデータ:顧客ごとの契約の開始・転換・プランの変更・解約の日と、MRR。Stripeなどの決済サービスのデータが使えます(「ClaudeでStripeのデータを分析する方法(別タブで開く)」)
- 利用のデータ:ログインや主要な機能の利用回数など。先に動く指標を出すときに使います
- 顧客の属性:プラン、業種、規模、担当者など。KPIを分けて見るときに使います
定義を前提として渡す
CSのKPIは、同じ名前でも会社によって定義が違います。Claudeに依頼するときは、定義を前提として渡します。
前提の例
・月は日本時間で区切る。各月の月初にMRRが0より大きい顧客を期首の顧客とする
・解約率(顧客数)は、期首の顧客のうち、月末にMRRが0になった顧客の割合。休止も解約に含める
・NRRは、期首の顧客の月末のMRR ÷ 月初のMRR。期間の途中の新規は含めない
・GRRは、拡大を足さずに、解約・休止・縮小だけを反映した継続率
・有料転換率は、その月にトライアルを始めた人のうち、有料に転換した人の割合。トライアルが終わっていない月は「確定前」とする
指示の例
プロンプト例
直近6か月について、期首の顧客数、期首のMRR、解約率、解約・休止・縮小・拡大のMRR、GRR、NRR、有料転換率を、月ごとの表にしてください。
プロンプト例
NRRを頂点に、解約率・縮小・拡大・GRRと、有料転換率・利用度などの先に動く指標を並べたKPIツリーを作ってください。直近の月の値を入れ、前月から悪化した指標には印を付けてください。
プロンプト例
解約率を、プラン別・契約からの月数別に分けてください。解約率が全体より高いグループと、そのグループで解約の前に下がっていた利用の指標を教えてください。
毎月の集計を自動にする
定義と依頼文が決まったら、毎月同じ形で集計されるようにしておくと、担当者の手間が減ります。Claude Codeなどで定期的に実行する方法は、「広告レポートをAIで自動化する方法(別タブで開く)」の手順が参考になります。
カスタマーサクセスのKPIを決めるときの注意点
月次と年次を混ぜない
月次の解約率が4%のとき、年間で残る顧客は約6割です(0.96の12乗)。月次と年次の値を同じ表に並べると、誤って比べてしまうことがあります。目標と実績は、同じ期間の単位でそろえます。
新規の顧客を混ぜない
NRRや解約率は、期首にいた顧客だけで計算します。期間の途中で増えた新規の顧客を分母や分子に入れると、新規が多い月ほど数字が良く見えます。
先に動く指標が、結果につながっているかを確かめる
利用度やヘルススコアを目標にしても、それが解約や拡大と関係していなければ、改善しても結果は変わりません。半年ほど経ったら、先に動く指標の高い顧客と低い顧客で、解約率に差があるかを確かめます。
担当者が動かせる指標を選ぶ
CSの担当者の目標には、担当者の行動で動かせる指標を選びます。価格の改定や製品の不具合で動くNRRを、担当者の個人の目標にすると、評価が納得されにくくなります。
まとめ
カスタマーサクセスのKPIは、NRR・GRR・解約率などの結果の指標と、有料転換率・アクティベーション率・利用度などの先に動く指標に分けて整理します。
- KPIツリー:NRRを頂点に、解約・縮小・拡大に分解し、それぞれの先に動く指標をつなげる
- 月次の集計:毎月同じ定義で集計し、変化に気づけるようにする
- 目標の置き方:経営や部門には結果の指標、CSの担当者には先に動く指標を置く
契約・請求のデータと利用のデータがそろっていれば、これらの集計はClaudeに任せられます。定義を前提として渡し、毎月同じ形で確認できるようにしておくのがおすすめです。




