CDP(Customer Data Platform、カスタマーデータプラットフォーム)は、顧客ごとのデータを1つの記録にまとめ、ほかのシステムから使えるようにする仕組みです。サイトやアプリでの行動、購入、問い合わせなど、別々のツールにある顧客のデータを、1人の顧客の記録としてつなげます。
業界団体のCDP Instituteは、CDPを「ほかのシステムから利用できる、永続的で統合された顧客の記録を作成・維持するソフトウェア」と定義しています(What is a CDP?(別タブで開く))。
なお、「CDP」は、環境の情報開示を進める団体(旧称 Carbon Disclosure Project)の名称としても使われます。本記事で扱うのは、マーケティングのCDPです。
本記事では、CDPとDMP・CRM・DWHとの違い、パッケージ型のCDPとDWHを使う「コンポーザブルCDP」の違い、主な製品、広告に連携するときの注意点を解説します。記載の仕様と料金は2026年10月時点の公式情報に基づきます。
CDPでできること
CDPの主な機能は、次の3つです。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| データを集める | サイト・アプリの行動、購入、CRM、問い合わせなどのデータを取り込む |
| 顧客ごとにまとめる | メールアドレスや会員IDなどで、同じ人のデータをつなげ、1人の顧客の記録(プロファイル)にする |
| ほかのシステムで使う | 条件で顧客を絞り込み(セグメント)、メール配信、広告、CRMなどに送る |
たとえば「直近30日でアプリを3回以上開いたが、まだ有料に転換していない人」を絞り込み、メールで案内を送り、同じ人を広告の配信対象から外す、といった使い方です。
CDP Instituteの要件
CDP Instituteは、CDPと呼べる製品の要件として、次の7つを挙げています。1つでも満たさなければCDPとは呼べない、という位置づけです(What is a RealCDP?(別タブで開く))。
- 構造化・半構造化・非構造化のデータを取り込み、保存できる
- 利用者が指定した項目をすべて取り込む
- 利用者が指定した期間(プライバシーの制約の範囲で)、データを保存する
- 顧客ごとの統合されたプロファイルを作る
- すべてのデータを外部のシステムに渡せる
- 新しいデータに反応し、プロファイルをリアルタイムで返す
- 個人情報の保護と安全のためにデータを管理できる
DMP・CRM・DWHとの違い
CDP Instituteは、CDPと似た仕組みを次のように説明しています(What is a CDP?(別タブで開く))。
| 主な目的 | 主なデータ | |
|---|---|---|
| CDP | 顧客の識別、プロファイル、ほかのシステムでの活用 | 主に自社のデータ。識別された個人のデータを、自社が決めた期間保存する |
| CRM | 営業・サポートの担当者が、顧客とのやり取りを記録して使う | 営業・サポートの記録。主にCRM自身に入力したもの |
| DMP | 広告のためのセグメントを作る | 主に匿名のデータ。第三者のデータを短い期間だけ持つことが多い |
| DWH | 汎用の保管と分析。技術のチームが管理する | 主に構造化されたデータや社内のデータに限られることが多い |
CRMとの違いは、CRMが営業やサポートの担当者が使う「業務のシステム」であるのに対し、CDPは顧客のデータを集めて、ほかのシステムに渡す「土台」である点です。
DWHとの違いは、DWHが分析全般のための保管場所であるのに対し、CDPは顧客のプロファイルと、そのプロファイルをほかのシステムで使うことに特化している点です。DWHについては「データウェアハウス(DWH)とは(別タブで開く)」で解説しています。
パッケージ型のCDPとコンポーザブルCDP
CDPの作り方には、大きく2つの考え方があります。「コンポーザブル」は、部品を組み合わせて作る、という意味です。
| パッケージ型 | コンポーザブルCDP | |
|---|---|---|
| 仕組み | データの取り込み・保管・統合・活用を、1つの製品で行う | 自社のDWHにあるデータを、そのままセグメントの作成と配信に使う |
| データの保管場所 | CDPの製品の中(DWHとは別にコピーを持つ) | 自社のDWH |
| 向いている場面 | DWHを持っていない。セグメントの作成や配信を、画面で操作したい | すでにDWHにデータを集めている |
| 主な製品 | Salesforce Data 360、Treasure Data(Treasure AI)、Adobe Real-Time CDP、Twilio Segmentなど | Hightouch、Fivetran Activations(旧Census)、Segmentの一部の機能など |
Hightouchは、コンポーザブルCDPを、別のコピーを取り込んで保管するのではなく、既存のクラウドのDWHから直接データを活用するものと説明しています(Composable CDP(別タブで開く))。データの保存は自社のDWHが担い、DWHとツールを組み合わせて、CDPの役割を果たす形です。
コンポーザブルCDPの中心にある、DWHのデータを業務のツールに戻す処理は「リバースETL」と呼ばれます。BigQueryで計算した利用状況をSalesforceに自動で反映する例は、「Salesforceに顧客の利用状況を自動で反映する方法(別タブで開く)」で紹介しています。
なお、パッケージ型の製品も、DWHのデータをコピーせずに使う機能を増やしています。たとえばSalesforce Data 360は、「ゼロコピー」の仕組みで、外部のデータを複製せずに使えるとしています(Data 360(別タブで開く))。Treasure AIも、日本語のサイトで「オールインワンCDP」と「コンポーザブルCDP」の両方を案内しています(Treasure AI(別タブで開く))。
主な製品(2026年10月時点)
| 製品 | 概要 | 料金 |
|---|---|---|
| Salesforce Data 360 | 旧称Data Cloud。Salesforceのプラットフォーム全体を支えるデータの基盤で、CDPの機能を持つ | 定価の一部が公開されている(クレジットやプロファイルの数に応じた料金) |
| Treasure Data(Treasure AI) | 2026年4月20日に、会社の事業名をTreasure Dataから Treasure AIに変更。CDPの製品名は Treasure Dataのまま | 公開されていない |
| Adobe Real-Time CDP | Adobe Experience Platformの上で動くCDP。BtoC・BtoB向けなどのエディションがある | 公開されていない |
| Twilio Segment | サイトやアプリの行動データの収集から始まった製品。DWHのデータを使う機能(Linked Audiences)もある | 月に追跡するユーザー数(MTU)に応じた料金。金額は問い合わせ |
| Hightouch | DWHの上で動くコンポーザブルCDP | 使った分に応じた料金 |
| Fivetran Activations | 旧Census。Fivetranが2025年に買収を発表し、2026年2月からFivetranの機能として提供 | MAR(その月に追加・更新・削除された行の数)に応じた従量課金。無料プランの枠あり |
出典:Salesforce Data 360(別タブで開く)、Data 360の料金(別タブで開く)、Treasure Data becomes Treasure AI(別タブで開く)、Adobe Real-Time CDP(別タブで開く)、Segmentの料金(別タブで開く)、Linked Audiences(別タブで開く)、Hightouchの料金(別タブで開く)、Census joins Fivetran’s consumption-based pricing(別タブで開く)
FivetranはCensusを買収し、2026年2月から「Fivetran Activations」として提供しています。また、2026年6月にはdbt Labsとの合併も完了しました(Fivetranのプレスリリース(別タブで開く))。データの取り込み・変換・業務のツールへの書き戻しが、同じ会社の製品になっています。
広告に連携するときの注意点
CDPの使い方の1つに、作ったセグメントを広告の配信に使うことがあります。Google広告では、自社の顧客のリストを「カスタマー マッチ」として使えます。
ただし、使える範囲には条件があります(カスタマー マッチのポリシー(別タブで開く))。
- 前提:ポリシーの遵守と、支払いの実績が良好であること。満たさないアカウントは、カスタマー マッチを使えない
- ターゲティングと個別の入札単価調整:Google広告で90日以上の利用実績があり、利用金額が通算5万米ドルを超えている広告主だけが使える。米ドル以外の通貨のアカウントは、月ごとの平均の換算率で米ドルに換算される
- それ以外の広告主:リストに入った人の成果を見る「モニタリング」と、配信の対象から外す「除外」にだけ使える
広告への連携を目的にCDPを入れる場合は、先に自社のアカウントが条件を満たすかを確かめます。
CDPを入れるべきかの判断
次の点を確かめると、判断しやすくなります。
- 何に使うかが決まっているか:「解約しそうな人に案内を送る」「有料の顧客を広告の対象から外す」など、最初に使う場面が決まっていないと、データを集めただけで終わる
- すでにDWHにデータを集めているか:集めているなら、DWHの上でセグメントを作り、リバースETLで送るコンポーザブルな形で足りることがある
- リアルタイムの反応が必要か:サイトを見ている最中に表示を変えるなど、秒単位の反応が必要なら、リアルタイムの処理に対応した製品かを確かめる
- 誰が運用するか:DWHとSQLを扱える人がいなければ、セグメントの作成を画面で操作できる製品を選ぶ。ただし、データの取り込みや顧客の統合の設定には、どちらの形でも技術の担当が要ることが多い
- 費用の形:パッケージ型はCDPの製品の契約。コンポーザブルな形は、DWHの費用と、連携のツールの従量課金
サブスク・SaaSの事業会社では、最初の目的が「解約の兆しのある顧客をCSや営業に知らせる」「有料の顧客を広告から外す」といった、日単位の更新で足りるものであることもあります。この場合は、まずDWHに決済・アプリ・CRMのデータを集め、必要な項目だけをCRMや広告に送る形から始められます。CDPの製品を別に契約せずに始められるため、費用を抑えやすくなります。
まとめ
- CDP:顧客ごとのデータを1つの記録にまとめ、ほかのシステムから使えるようにする仕組み
- 違い:CRMは営業・サポートの業務のシステム、DMPは主に匿名のデータで広告のセグメントを作る仕組み、DWHは汎用の保管と分析の場所
- 2つの形:1つの製品で完結するパッケージ型と、自社のDWHのデータを使うコンポーザブルCDP
- 主な製品:Salesforce Data 360(旧Data Cloud)、Treasure AI(旧Treasure Data)、Adobe Real-Time CDP、Twilio Segment、Hightouch、Fivetran Activations(旧Census)
- 注意点:Google広告のカスタマー マッチをターゲティングに使うには、利用実績の条件がある
- 判断:使い道、DWHの有無、リアルタイムの必要性、運用する人で決める
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