「解約率は毎月4%前後で安定している。でも、最近獲得した顧客は本当に続いているのか」。サブスクリプション型のサービスでは、全体の解約率だけでは答えられない問いがあります。
全体の解約率には、契約したばかりの顧客と、何年も使っている顧客が混ざっています。獲得した時期ごとに顧客をまとめ、その後の継続を追う「コホート分析」を使うと、こうした問いに答えられます。
本記事では、コホート分析のやり方を、継続率の計算方法と表の読み方を中心に解説します。
そのうえで、デモ用のデータでコホートの表を作った例と、継続率の3つの計算方法の違い、Claudeで集計する方法と注意点を紹介します。
コホート分析とは
コホート分析は、同じ時期に同じ行動をした顧客を1つのまとまり(コホート)とし、そのまとまりごとに、その後の行動を追う分析です。
サブスクリプション型のサービスでは、「有料に転換した月」でコホートを作り、その後の継続率を経過月ごとに並べるのが基本です。
コホートの切り方
コホートは、何をそろえて比べたいかで切り方を決めます。
| 切り方 | 例 | わかること |
|---|---|---|
| 時期 | 有料に転換した月、登録した週 | 獲得した時期による違い、施策の前後の変化 |
| 流入元 | 検索広告、SNS広告、自然検索 | 獲得の経路による継続の違い |
| プラン | 月額、年額、上位プラン | プランによる継続の違い |
| 初期の行動 | トライアル中の利用度 | 最初の体験と継続の関係 |
まずは時期で切ったコホートの表を作り、気になる変化があれば、流入元やプランで分けて原因を探します。
継続率の計算方法
コホートで計算する
コホートの継続率は、次の式で計算します。
kか月後の継続率 = kか月後も契約が続いている人数 ÷ コホートの人数
分母は、コホートの最初の人数で固定します。途中で解約した人も分母から外しません。
複数のコホートの平均を出すときは、kか月後まで経過したコホートだけで計算します。まだkか月経っていないコホートを含めると、解約がまだ起きていない人が混ざり、継続率が高く出ます。
ほかの計算方法との違い
継続率は、ほかの方法で計算されることもあります。
- 月次解約率から換算する:(1 − 月次解約率)のk乗。解約のペースが毎月同じだと仮定する
- 今の継続中の割合:今、契約が続いている人 ÷ これまでに契約した人。経過月を区別しない
どちらも手軽ですが、実態とずれることがあります。後で、デモ用のデータで比べます。
デモ用のデータでコホートの表を作る
ここからは、架空の動画学習のサブスクリプションサービス「Lumina」のデモ用のデータで、コホート分析をした例を紹介します。対象は、2025年5月〜2026年4月に月額プランで有料に転換した3,338人です。
有料に転換した月ごとの継続率
有料に転換した月ごとに顧客をまとめ、1か月後から10か月後までの継続率を並べました。

Claudeで作成した、有料転換月ごとの継続率(デモ用のデータ)
平均の継続率は、1か月後95%、3か月後83%、6か月後74%、10か月後62%でした。
表の読み方
コホートの表は、3つの方向で読みます。
- 横に読む(1つのコホートの推移):継続率がどの時期に大きく下がるかがわかります。Luminaでは、1〜3か月後にかけて毎月5ポイント以上下がり、その後は下がり方が緩やかになります。解約を防ぐ施策は、転換して間もない時期に集中させるのが効果的です
- 縦に読む(同じ経過月のコホートどうし):最近のコホートが、以前より続いているかがわかります。3か月後の継続率はコホートによって79〜89%で、最近のコホートで悪化している傾向はありません
- 斜めに読む(同じ暦の月):表の斜めの並びは、同じ暦の月に当たります。特定の月だけ、どのコホートでも継続率が下がっていれば、値上げや障害など、その月に起きたことが原因と考えられます
縦に読んで悪化しているコホートが見つかったら、そのコホートを流入元やプランで分け、どの顧客が原因かを探します。解約率が悪化したときの原因の探し方は、「チャーン分析のやり方(別タブで開く)」で解説しています。
継続率の3つの計算方法を比べる
同じ顧客について、継続率を3つの方法で計算して比べました。

Claudeで作成した、継続率の3つの計算方法の比較(デモ用のデータ)
月次解約率から換算すると、高く出る
月次解約率(4.0%)から換算した継続率は、6か月後で78%と、コホートで計算した74%より4〜5ポイント高くなりました。
月次解約率は、長く続いている顧客も含めた全体の値です。長く続いている顧客は解約しにくいため、全体の解約率は、転換して間もない顧客の解約率より低くなります。そのため、新しく獲得した顧客がどれだけ続くかを見積もるときに使うと、高めに出ます。
LTVの計算で継続率を使うときも、コホートで計算した継続率を使うのが確実です(「LTVの計算方法(別タブで開く)」)。
今の継続中の割合は、比較に使えない
今、契約が続いている人の割合は78%でした。この数字は、転換したばかりの顧客が多いほど高くなります。顧客の獲得が伸びている時期は、継続が悪くなっていても高く見えることがあります。
何か月後の継続率なのかが決まらないため、ほかの時期や他社と比べたり、目標にしたりするのには向きません。
Claudeでコホート分析をする方法
必要なデータ
- 契約のデータ:顧客ごとの有料への転換日、解約日、プラン
- 顧客の属性:流入元、トライアル中の利用度など。コホートを分けて比べるときに使う
契約のデータは、Stripeなどの決済サービスのデータが使えます(「ClaudeでStripeのデータを分析する方法(別タブで開く)」)。BigQueryにまとめておけば、Claudeに依頼して集計できます(「ClaudeとBigQueryを連携する方法(別タブで開く)」)。
前提として渡すこと
前提の例
・対象は、転換時のプランが月額の有料顧客。年額プランは別に集計する
・コホートは、有料に転換した月(日本時間)
・kか月後の継続率は、転換からkか月後も契約が続いている人数 ÷ コホートの人数
・まだkか月経っていないコホートは、その月を空欄にする。平均は、kか月経ったコホートだけで計算する
指示の例
プロンプト例
有料に転換した月ごとのコホートについて、1か月後から12か月後までの継続率を表にしてください。継続率が低いほど色を濃くし、最後の行に経過月ごとの平均を入れてください。
プロンプト例
3か月後の継続率を、コホートごとに折れ線グラフにしてください。直近3つのコホートが、それ以前の平均より3ポイント以上低い場合は、流入元別・プラン別に分けて、どこで下がっているかを示してください。
プロンプト例
経過月ごとの継続率を、コホートで計算した値と、直近の月次解約率から換算した値で並べてください。差が大きい経過月と、その理由を説明してください。
結果を確かめる
- コホートの人数:人数が数十人のコホートは、継続率が大きくぶれます。人数を表に並べ、少ないコホートの差は断定しないようにします
- 経過月の数え方:「1か月後」を、転換日からちょうど1か月後とするか、翌月の月末とするかで、数字が変わります。数え方を前提に書いておきます
コホート分析をするときの注意点
月額と年額を分ける
年額プランは1年分を前払いするため、途中で解約の手続きをしても、契約が終わるのは期間の終わりです。そのため、最初の更新までは継続率がほぼ100%になります。月額プランと混ぜると、継続率が実際より高く見えます。月額と年額は分けて集計します。
顧客数と金額の両方で見る
顧客数の継続率に加えて、金額(MRR)の継続率も見ると、上位プランへの変更などによる拡大がわかります。金額の継続率の見方は、「NRRとGRRの計算方法(別タブで開く)」で解説しています。
古いコホートほど、データが多い
表の右側(長い経過月)は、古いコホートのデータだけで計算しています。古いコホートと最近のコホートで顧客の性質が違う場合、長い経過月の平均は、最近の顧客にはそのまま当てはまりません。
まとめ
コホート分析は、獲得した時期などで顧客をまとめ、その後の継続を追う分析です。全体の解約率ではわからない、時期による変化や、解約が集中する時期がわかります。
- 計算方法:kか月後の継続率 = kか月後も続いている人数 ÷ コホートの人数。平均は、kか月経ったコホートだけで計算する
- 読み方:横で解約が集中する時期を、縦で最近のコホートの変化を、斜めで特定の月の出来事を読む
- 注意点:月次解約率からの換算や、今の継続中の割合は、実態とずれる
契約のデータがそろっていれば、コホートの表の作成から、悪化したコホートの原因の切り分けまでをClaudeに任せられます。毎月同じ形で表を更新し、縦の変化を確かめ続けるのがおすすめです。




