Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、自社ECなど、複数のモールに出店していると、売上や注文数はそれぞれの管理画面で確認できます。しかし、モールごとに数字を見ているだけでは、全体の売上の推移も、「どのモールが利益に貢献しているのか」も分かりません。
複数モールの売上を分析するには、データを1か所に集めて一元化する必要があります。さらに、モールごとに手数料、販促費、広告の仕組み、取得できる顧客データが異なるため、売上だけを並べて比較すると判断を誤ります。
本記事では、複数モールの売上分析で見るべき指標と、モールごとの注意点、一元分析ツールとBigQueryへの自前統合の使い分け、統合したデータをClaudeで分析する方法を解説します。

Claudeで作成した、複数モールの売上を一元化したダッシュボードの例(デモ用のデータ)
モールごとに見ていると判断を誤る理由
ECでは、Amazonはセラーセントラル、楽天市場はRMS、Yahoo!ショッピングはストアクリエイターPro、自社ECはShopifyなど、チャネルごとに管理画面が分かれています。
どの管理画面でも売上は確認できますが、事業全体の判断に必要なのは「どこで売れているか」ではなく、「その売上が利益につながっているか」です。
- Amazon:売上が大きくても、販売手数料やFBAの費用、広告費を差し引くと利益率が低い場合がある
- 楽天市場:セールで売上が伸びても、ポイント原資やクーポン、広告費の負担が大きい
- Yahoo!ショッピング:ストアポイントや販促施策によって売上と採算が変動しやすい
- 自社EC:売上規模はモールより小さくても、顧客データを使ってリピートやLTVを把握しやすい
このように、モールごとに収益構造が異なるため、売上だけで評価すると全体として最適な判断はできません。
複数モールの売上分析で見るべき指標
複数モールの売上を一元化して分析するときは、少なくとも次の指標をそろえて比較します。
- 売上:どのチャネルで、どれだけ売れているか
- 広告費・ROAS:広告費に対して、どれだけ売上が返ってきているか
- 手数料・粗利:売上から原価と費用を差し引いて、どれだけ利益が残っているか
- リピート・LTV:一度購入した顧客が、継続して購入しているか
同じ100万円の売上でも、広告費が10万円か30万円かで評価は変わります。さらに、モールの手数料、決済手数料、物流費、ポイント原資、クーポンによる値引き、返品やキャンセルまで含めると、実際に残る利益は大きく変わります。
モール別の売上とROASを単純に比較できない理由
同じ「売上」でも、税込か税抜か、送料を含むか、クーポンやポイントによる値引きの前か後か、キャンセルや返品をいつ反映するかは、チャネルによって異なります。
広告の成果も同様です。Amazon広告、楽天市場のRPP広告、Yahoo!ショッピングの広告、Google広告、Meta広告では、広告経由の売上の計測方法が異なります。
- クリックから何日以内の購入を広告の成果に含めるか
- モール内の広告と外部の広告で、同じ注文を重複して成果に数えていないか
- 指名検索やリターゲティングの成果をどう評価するか
これらの前提をそろえずに、各管理画面のROASをそのまま比べると、判断を誤ります。
外部の広告媒体どうしの比較で注意する点は、「広告の媒体横断分析をAIで行う方法|BigQuery×Claude(別タブで開く)」で解説しています。
Amazonで見るべき項目
Amazonでは、売上と広告費に加えて、ACOS(別タブで開く)と手数料を確認します。
ACOSは広告経由の売上に対する広告費の割合で、ROAS(広告経由の売上 ÷ 広告費)の逆数にあたります。
出品の費用(別タブで開く)には、カテゴリーごとに料率が異なる販売手数料のほか、FBAを利用する場合のFBA配送代行手数料やFBA在庫保管手数料があります。次の観点で確認します。
- 商品別の売上と注文数
- 広告費、ACOS、ROAS
- 販売手数料とFBAの費用
- 商品別の粗利と在庫の状況
売上が大きい商品と、利益が残る商品は同じとは限りません。広告で売上を伸ばしていても、手数料を差し引くと粗利が薄い商品がある一方、売上は小さくても粗利率が高く在庫の回転がよい商品は、投資を増やす候補になります。
楽天市場で見るべき項目
楽天市場では、売上と広告費に加えて、ポイントやクーポンなどの販促費と各種の手数料を確認します。
RPP広告(別タブで開く)は、楽天市場の検索結果などに商品を掲載するクリック課金型の広告です。
出店の費用(別タブで開く)には、月額出店料、売上に応じたシステム利用料、楽天ポイントの原資、楽天ペイ利用料などがあります。
楽天スーパーSALEやお買い物マラソンなどのイベントでは売上が大きく伸びますが、ポイントやクーポン、広告費を含めると、利益がどれだけ残ったかは別に確認する必要があります。
- 通常時とセール時の売上・粗利の違い
- RPP広告の広告費、クリック数、ROAS
- ポイントやクーポンによる利益率への影響
- 商品別・イベント別の採算
Yahoo!ショッピングで見るべき項目
Yahoo!ショッピングでは、売上と広告費に加えて、ストアポイントの原資やアフィリエイトの費用を含めた採算を確認します。
2026年10月時点の料金体系(別タブで開く)では、初期費用は無料で、月額システム利用料(1万円・税抜)と売上ロイヤリティ(2.5%)がかかります。このほか、ストアポイントの原資、アフィリエイトの報酬と手数料、決済サービスの手数料も売上に応じてかかります。
料金体系は改定されることがあるため、前年と比較するときは、比較する期間の費用の構造が同じかを確認します。
- 売上と注文数
- 広告・販促施策ごとの成果
- ストアポイントの原資と、アフィリエイトの費用
- 商品別の粗利と採算
自社ECで見るべき項目
Shopifyなどの自社ECは、モールと比べて顧客データや購入履歴を活用しやすい点が特徴です。初回の購入だけでなく、その後のリピートやLTVまで確認します。
ShopifyのデータをClaudeから分析する方法は、「ClaudeでShopifyの売上を分析する方法|公式コネクタとBigQuery連携(別タブで開く)」で解説しています。
広告経由の初回購入だけを見るとCPAが高く見える場合でも、その後のリピートが多ければ、投資を続けるべきチャネルである可能性があります。
- 広告経由の初回購入とROAS
- 商品別の粗利と購入単価
- リピート率とLTV
- 顧客を獲得したチャネル別の継続購入
一元分析ツールを使うか、BigQueryに自前で統合するか
複数モールのデータを一元化する方法は、大きく分けて2つあります。既存の一元管理・一元分析のツールを使う方法と、各モールのデータをBigQueryなどに自前で統合する方法です。
一元管理・一元分析のツールでできること
複数モールの運営を効率化するツールには、主に次の2種類があります。
- EC一元管理ツール:複数モールの受注・在庫・商品登録などの業務をまとめて行うためのツールです。注文の分析機能を備えたものもあります。たとえばCROSS MALL(別タブで開く)では、複数のネットショップの注文を、店舗別・商品別・カテゴリ別に、週の推移や期間の対比で分析できます
- EC向けの一元分析ツール:複数のECサイトのデータを一元化し、売上や予算の進捗などを確認するための分析ツールです(例:CROSS ANALYTICS(別タブで開く))
どちらも、モールごとのAPI連携や集計の仕組みを自社で作らずに、複数モールの売上を1つの画面で確認できる点が利点です。受注・在庫の業務をまとめたい場合や、全体の売上と商品別の動きを手早く把握したい場合は、まずこれらのツールを検討します。
対応しているモールや分析できる項目はツールによって異なるため、導入前に各社の公式情報で確認してください。
BigQueryへの自前統合が向く場面
一方、次のような分析をしたい場合は、各モールのデータをBigQueryなどに自前で統合する方法が向いています。
- 広告費や原価まで含めて粗利で比べたい:モールの受注データに、Google広告・Meta広告などの外部の広告費や、自社の原価・物流費のデータを結び付ける
- 顧客単位でリピートやLTVを見たい:自社ECの顧客データやCRMのデータと組み合わせて分析する
- 分析の切り口を自由に変えたい:ツールに用意された画面に限らず、SQLやAIで任意の条件で集計する
自前で統合する場合は、データを取り込む仕組みと、売上の定義や商品コードをそろえる作業を自社で用意する必要があります。その分、モールの受注データだけでは分からない採算まで、同じ基準で比較できます。
複数モールのデータをAPIで自動で統合する
各管理画面からCSVを書き出し、商品コードをそろえ、スプレッドシートで集計する運用は、続けるほど負担が大きくなります。各モールのデータをAPIやデータ統合ツールで自動取得し、BigQueryなどのデータウェアハウスに集約する方法が適しています。
- 各チャネルの売上・注文データを取得する
- 広告費と広告の成果のデータを取得する
- 商品マスタや原価のデータと結び付ける
- BigQueryなどに統合する
- BIのダッシュボードやClaudeで分析する

EC販売チャネルのデータを統合して分析する流れ
各チャネルのデータを取得するAPI(2026年10月時点)
| チャネル | データを取得するAPI | Fivetranのコネクタ |
|---|---|---|
| 自社EC(Shopify) | Admin API(別タブで開く)で注文・商品・顧客などを取得できる | ◎ 標準のコネクタ(別タブで開く)がある |
| Amazon | Selling Partner API(SP-API)(別タブで開く)で注文・決済・在庫・レポートなどを取得できる | ◎ 標準のコネクタ(別タブで開く)がある。広告は別のAmazon Adsのコネクタで取り込む |
| 楽天市場 | RMSのAPI(RMS WEB SERVICE)で受注・商品・在庫などを扱える。利用には楽天市場への申し込みが必要 | △ コネクタがない。自社で取り込みの仕組みを作る |
| Yahoo!ショッピング | ストア向けのAPI(別タブで開く)で注文・商品・在庫などを扱える。注文API・定期購入APIは利用申請が必要 | △ コネクタがない。自社で取り込みの仕組みを作る |
◎:優れている △:制約がある
Fivetranには、ShopifyとAmazon(セラーセントラル・ベンダーセントラル)のデータを取り込むコネクタがあり、Shopifyについては注文・顧客・商品などを分析しやすい形に整えるdbtのパッケージ(dbt_shopify(別タブで開く))も公開されています。
ただし、Amazonのコネクタは、注文と配送のデータに含まれる個人情報(PII)を同期しません。SP-APIがこれらのデータに個人情報を返さないためです(Amazon Selling Partner(別タブで開く))。
そのため、Amazonでは顧客単位のリピートやLTVは算出しにくく、商品単位・注文単位での比較が中心になります。
一方、楽天市場とYahoo!ショッピングの受注データを取り込むコネクタはありません。Fivetranには「Rakuten Advertising(別タブで開く)」のコネクタがありますが、これは楽天グループのアフィリエイトのネットワークのデータを取り込むもので、楽天市場の受注やRPP広告のデータは対象ではありません。
楽天市場とYahoo!ショッピングは、各APIからデータを取得する仕組みを、FivetranのConnector SDK(別タブで開く)やGoogle Cloud上のプログラムなどで自社で用意する必要があります。
Fivetranの機能や料金は、「Fivetranとは?広告データ統合でできること・料金・始め方(別タブで開く)」で解説しています。
統合するときにそろえる項目
データを集めるだけでは、チャネルの貢献度は分かりません。次の項目をそろえて初めて、チャネルを同じ基準で比較できます。
- 商品コード:チャネルごとに異なる商品IDを、自社のSKUに対応付ける
- 売上の定義:税・送料・値引き・ポイントの扱いと、キャンセルや返品を反映する時点を統一する
- 費用:チャネルごとの手数料、ポイント原資、広告費を、注文や商品と結び付ける
- 原価:原価のデータと結び付けて、粗利を計算する
- 顧客:顧客データを取得できるチャネルでは、リピートやLTVを計算する

統合したデータから作成したチャネル別のサマリー(デモ用のデータ)
Claudeで複数モールの売上を分析する
統合したデータをClaudeに接続すれば、モール別の売上・広告費・粗利・LTVを、日本語の指示で集計・比較できます。
BigQueryへの接続方法と、分析の前提情報の与え方は、「広告の媒体横断分析をAIで行う方法|BigQuery×Claude(別タブで開く)」で解説しています。
複数モールの売上分析のプロンプト例
プロンプト例
先月、売上は伸びたが粗利率が下がったチャネルと商品を抽出してください。
プロンプト例
チャネル別に、売上・広告費・手数料・粗利を並べ、広告費を増やす候補になるチャネルを根拠とともに示してください。
プロンプト例
楽天スーパーSALEの期間中に売上が伸びた商品について、ポイント原資と広告費を差し引いた粗利を、通常時と比較してください。
Google広告を例にしたClaudeでの分析の始め方は「ClaudeでGoogle広告を分析する方法(別タブで開く)」で、定期レポートの自動化は「広告レポートをAIで自動化する方法|Claudeで集計から改善提案まで(別タブで開く)」で解説しています。
複数モールの売上分析でよくある失敗
- 売上だけでチャネルを評価する:広告費、手数料、ポイント、クーポン、物流費を差し引くと、利益がほとんど残っていない場合がある
- 手数料や販促費を差し引かずにROASを比較する:ROASが高くても、モールの手数料やポイント原資を含めると採算が合わない場合がある
- モール内の広告と外部の広告の成果を重複して数える:同じ注文が複数の広告の成果として報告される
- セールの売上を継続的な成長とみなす:一時的に売上が伸びても、粗利が下がっていたり、リピートにつながっていなかったりする
- 初回購入だけで判断する:LTVを見ないと、継続購入の多いチャネルを過小評価する
まとめ
- 複数モールの売上分析では、データを1か所に集めて一元化したうえで、同じ基準で比較する。受注・在庫の業務と注文の分析が中心なら一元管理・一元分析ツール、広告費・原価まで含めた粗利やLTVで比べるならBigQueryへの自前統合が向く
- 自社EC・Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングは、売上の定義、広告の成果の計測方法、費用の構造、取得できる顧客データが異なるため、管理画面の数字をそのまま並べて比較できない
- 売上だけでなく、広告費・手数料・粗利・リピート・LTVをそろえて比較する
- 2026年10月時点で、ShopifyとAmazonはFivetranのコネクタで取り込める一方、楽天市場とYahoo!ショッピングは各APIから取り込む仕組みを自社で用意する必要がある
- 統合したデータをClaudeに接続すれば、チャネル別の採算や商品別の利益を日本語の指示で確認できる
株式会社INVOXは、データ基盤の構築、データ分析の支援、AIエージェントの開発を行っています。自社EC・Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングの受注データと、広告・GA4・原価のデータを統合し、ClaudeやChatGPTで分析できる環境の構築も支援しています。
支援の内容は「マーケティング分析(別タブで開く)」で、支援実績は「LTV予測と重点顧客の特定で、根拠ベースの施策判断ができる状態に(別タブで開く)」で紹介しています。
「モールごとの売上は見ているが、全体の利益への貢献が分からない」「CSVの集計をやめて、ECデータの分析を自動化したい」といった課題をお持ちでしたら、お問い合わせください。




